太宰治、予想以上に多い「盗作疑惑」の興味深い中身 「生れて、すみません」の言葉も元ネタがある

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さて、ほかにも有名な作品で盗作疑惑があがっている小説がある。

太宰の代表作の1つである『斜陽』は太宰の愛人・太田静子の「斜陽日記」が元ネタであり、ファンに愛されることの多い短篇『トカトントン』も読者の手紙を下敷きにしている。『正義と微笑』は後に俳優となった堤康久の日記が元ネタである。

ちなみに『斜陽』の有名なフレーズ「人間は恋と革命のために生まれて来たのだ」は、太田静子の日記「革命と恋、この二つを、世間の大人たちは、愚かしく、いまわしいものとして、私達に教えたのだ。この二つのものこそ、最も悲しく、美しくおいしいものであるのに、人間は恋と革命のために生まれて来たのであるのに」という一文をもじったものである。

太田の日記は現在『斜陽日記』として朝日文庫で出版されているので、たくさんの人の目に触れる機会が多いのは幸いだ。

このように、太宰の盗作疑惑を見ていると、世の中の文学がいかに、薄い氷の上を歩くように、正義なんてない場所で生まれていたのか、愕然とする。とくに愛人の日記を文学に昇華していたなんて、今だったら考えられない。女性の尊厳を何だと思っているんだ、と私が友人だったらとっちめてしまう。だが心中を繰り返していた太宰の生涯を見ると、倫理なんて考える余地もなかったのだろうな……と思えてしまうのも本当である。

ファンの少女の日記を改編した「女生徒」

さてそんな太宰の、やっぱり盗作疑惑がある小説を、最後に紹介して終わろう。

あさ、眼をさますときの気持は、面白い。かくれんぼのとき、押入れの真っ暗い中に、じっと、しゃがんで隠れていて、突然、でこちゃんに、がらっと襖をあけられ、日の光がどっと来て、でこちゃんに、「見つけた!」と大声で言われて、まぶしさ、それから、へんな間の悪さ、それから、胸がどきどきして、着物のまえを合せたりして、ちょっと、てれくさく、押入れから出て来て、急にむかむか腹立たしく、あの感じ、いや、ちがう、あの感じでもない、なんだか、もっとやりきれない。(太宰治『女生徒』角川文庫、KADOKAWA)

太宰治がつづった、1人の少女の物語である。なんて太宰は少女の些細な機微を描くのがうまいんだろう、と思いつつ読んだ読者も多いだろう。

しかし実際は、太宰が彼のファンの少女の日記を改編したものだったのだ。当時、太宰のファンであった有明淑という実在の「女生徒」は、自身の日記を太宰に送りつけていた。そう、太宰はその日記をもとに、『女生徒』を完成させたのである!

太宰は少女の気持ちがわかるわけでもなんでもなく、がっくりきてしまう話だが、意外とのこの元ネタとなる日記と『女生徒』を見比べると面白いことがわかってくる。

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