「自分だけ活躍してない」中年社員が抱く深い絶望 「東洋思想」から"苦境を脱する方法"を読み解く
“左遷”のような人事に落ち込む課長
伊藤は、以前から温めていた計画を実行に移すことにした。新規プロジェクトへの挑戦だ。
うまくいけば、会社の新しい柱になりうる事業である。もちろん、自身のキャリアにもプラスになるだろう。
そんな思いから、企画書を経営会議に提出し、検討の結果、なんとか承認を得ることができた。
ところが……。
予想していた結果がなかなか出ないことで、社内での彼の立場は日増しに悪くなっていった。「いつまで儲からないことをやってるんだ」。そんな陰口も聞こえてきた。
(あと、もう少しなのに……)
しかし、伊藤の健闘もむなしく、トップダウンで「撤退」の決定が下った。プロジェクトの続行に強く反対した役員がいたようだ。
そして、伊藤に「異動」の辞令が出た。
行先は名古屋支店の営業課長。課長ポジションとしてはスライドだが、東京の営業課で担当していた数字に比べると、ビジネスの規模は5分の1程度になった。
「落ち込むなよ。降格でも左遷でもないからな。元の場所にそのまま戻るよりも、少し環境を変えて活躍してもらおうってことだ」
営業部長はフォローしてくれたが、心は晴れなかった。
プロジェクトが失敗だったとは思いたくない。だが、社内では「なかったこと」とされていることが改めて実感できた。
会社から手のひらを返されたような気がして悔しさがこみあげる。それでも今は、現実を受け止めるしかないのだろう。
ある夜、伊藤は夢を見た。3年前に営業課を去っていった部下たちがスタートアップ企業を上場させ、取引所の鐘を鳴らしている。そして、その光景を遠くからボンヤリと眺めている自分がいた。
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