「自分だけ活躍してない」中年社員が抱く深い絶望 「東洋思想」から"苦境を脱する方法"を読み解く
人間はつい過去の失敗や後悔を思い出してしまうものです。それに対して道元は、「今」に集中することの大切さを「炭は炭、薪は薪」という言葉で説明しました。
目の前にある炭は昔は薪でした。しかし、今は炭に変わってしまった。
一度炭になった薪が、もう一度薪に戻ることは絶対にありません。薪は炭という新しい存在に変わったのだから、その新しい存在の方を見なくてはいけない。「昔は良い薪だったな」「今の炭は嫌いだ」などと言っても意味がない。過去に執着したり、現在と過去を比較したりする私たちにとって戒めとなるメッセージです。
自分の心の中の「他者」を捨てる
一方、「他己」とは自分の中にいる他人です。
私たちは「他人と自分を比較する」という点において強い執着を持っています。
出世して社内での地位を確立している同期、会社を辞めて他社で活躍している後輩……。
私たちは、このように他人と自分を比較して、うらやましく思ったり、自己嫌悪に陥ったりするものです。まわりの人たちの能力と自分のそれを比較して、自分の方が劣っているのではないかと考えて不必要に自分をおとしめてしまうことがあるでしょう。
人間は「勝ち負け」にとらわれやすい生きものです。とくに、幼い頃から厳しい競争にさらされる環境で育ってきた人は、「勝たなければいけない」と無意識に思うようです。そうした価値観を持つ人は、無意識に「誰かの勝ち」を「自分の負け」に変換します。
でも、私たちが生きている世界は、誰かの勝ちがそのまま自分の負けになるとは限りません。場合によっては「自分も相手も一緒に勝つ」ことだって十分あり得るでしょう。
道元は「自他不二」という言葉も残しています。
世界の大きな流れの中で見れば、自分と他人は、ある意味で同じである。だから、他人の喜びは自分の喜びであり、自分の喜びは他人の喜びである。
相手の成功を喜ぶためには、「愛」を持つことが大切だと道元は言います。道元はそれを「愛語」と表現し、愛は「言葉」に表れるのだと言いました。
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