「自分だけ活躍してない」中年社員が抱く深い絶望 「東洋思想」から"苦境を脱する方法"を読み解く

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私はときどきキャリアに関する悩みの相談を受けます。上司との相性が合わなくて悩んでいる、今の会社ではやりたいことができない、単純に将来のキャリアに悩んでいるなど……。

ある程度仕事に慣れてくると、こうした悩みはつきものでしょう。そのときに、今の環境への不満や不安のみが先行してしまう人は、なかなかそこから脱するきっかけをつかめない傾向にあります。

反対に、荀子が言うように、苦しい環境の中でも「良い点」を見つけてそれを人に語る人、あるいは腐らずに全力を尽くす人にはチャンスが訪れやすくなります。

なぜでしょうか?

それは苦境の中にいる人の様子を周囲はよく見ているからです。そして、時が巡ってきたときにその人に新たな機会を与えるかどうかを、そのふるまいから判断します。自分で自分のことを何とかしようとしている人ほど、結果として他人から助けてもらいやすいものです。

「今」に集中せよという禅の教え

そうは言っても、苦しい状況が続くとどうしても迷い、落ち込むものです。この迷いにどう向き合えばいいのでしょうか。

ここでは、禅の教えを参考にしてみます。

禅はインドから来た仏教と中国で生まれた老荘思想が融合し、日本で現在のような形に発展しました。中国語ではなく日本語の「ZEN」として世界で知られていることからも、日本独自の思想であることがわかります。

禅宗を代表する思想家であり、曹洞宗の開祖・道元はこんな言葉を残しています。

万法に証せらるゝといふは、自己の身心および他己の身心をして脱落せしむるなり。『正法眼蔵』
現代語訳:悟りの世界に目覚めさせられるということは、自己および他己(自分の中の他人)を脱落させることである。

「自己を脱落させる」とは、自分自身の余計な感情を捨て去るということです。

道元は、禅とは「心身脱落」をさせる行為だと言いました。集中して座禅を組んでいると、次第に何も考えない状態になります。そして、物事に対する執着や邪念が徐々になくなっていくでしょう。こうした「無我の境地」こそ、禅が目指す心身脱落なのです。

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