研究者が開発で「PDCAサイクルのCを重視する」訳 「予測困難なシミュレーション」で必要不可欠

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
業績予想のフィッシュボーン
(『なぜ君は、科学的に考えられないんだ?』より)

「例えば販売数は、前月の販売数に成長率をかけたものです。そして売上は販売数に設定価格をかけたものになります。ここではサンプルとして、同価格帯および同じターゲット層向けの製品を設定しています。このたびの改良により、その類似商品の5%上をいく販売成長率を目標としているため、図にあるようなバリュードライバーを設定して、予測収益を計算しました。それが山田さんに送ってもらった資料にあるものです」

班目教授は、資料の中の収益モデルのグラフに目を落とした。

予測収益のモデル
(『なぜ君は、科学的に考えられないんだ?』より)

三田村さんは続けた。

「この予測収益のグラフから、販売開始から何か月経てば目標の収益を達成するかがわかります。このような見通しを立てたうえで、この企画にゴーサインを出すか、あるいはバリュードライバーを見直すかの判断をするわけです。それで、班目教授、私はこの予測収益に不安があるのです」

「不安?」

班目教授は聞き返した。三田村さんは頷いた。

「予測収益やバリュードライバーの考え方は、ビジネスの世界ではよく使われている方法です。私はずっとそれらを使って仕事をしてきました。ですが先日の班目教授の話を聞いて、不安になってきたんです。自分たちが使ってきた武器が、実は間違ったものであったり、使い方を間違っていたりするのではないかと」

科学者は「仮説―演繹サイクル」を繰り返す

班目教授は頷いた。

「なるほど。はじめに私の印象を言うと……このように予測して、不都合な赤字となる場合に、バリュードライバーを見直して再計算をするという考え方は面白いと思う。我々研究者の問題解決方法と同じ原理である。我々は仮説を立ててそれを検証し、ダメだったら仮説を修正して、また検証していく。このプロセスを『仮説―演繹サイクル』という。このサイクルを何度も何度も繰り返していくのが、科学での事実の認定方法だ」

三田村さんは頷いた。頬が緩んでいることが見て取れた。

次ページ成長率は、どのように決めたのか
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事