研究者が開発で「PDCAサイクルのCを重視する」訳 「予測困難なシミュレーション」で必要不可欠

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予測が難しいシミュレーションのコツについて、具体的な方法を探っていきます(写真:Graphs/PIXTA)
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みなさんの会社には、「なんとなく」の判断がはびこっていないでしょうか? たとえば、「新しいビジネスや新商品の成否を“なんとなく”の印象で判断してしまう」「効果が不明確な施策も、これまでもそうだったからと“なんとなく”続ける」「新しい挑戦は“なんとなく”リスクがありそうだからやめておく」などです。
ビジネスの世界において「データ」や「エビデンス」が重要であることは、もはや周知の事実となりました。しかし、科学的事実にもとづいた思考を持とうとせず、「気合い」や「直感」に頼ろうとする人がいるのもまた事実です。現状を分析したり、見通しを立てたりすることを放棄した結果、損失を出してしまったり、好機を逃してしまったりしては、もったいないとしかいえません。
科学的な思考が欠かせないのが、「研究者」の世界です。「研究者の世界の思考法はビジネスにも役立つでしょう」と伝えるのは、『なぜ君は、科学的に考えられないんだ?』の著者、松尾佑一さんです。現役の研究者であり、受賞歴をもつ小説家でもある同氏が書き下ろした全編小説スタイルの同書から、「予測が難しいシミュレーション」のコツを抜粋してお届けします。
【あらすじ】

化粧品開発会社3年目の山田咲良は、東京科学技術大学の班目教授と共同で開発された化粧品「ドクターズコスメ」のリニューアル担当に任命された。プロジェクトを進めるなか、ある日、先輩の三田村さんから「私が担当している販売予測に不安があるので、班目教授に相談したい」と声をかけられる。そしてふたりは、班目教授のいる大学を訪れた――。

収益予想はフィッシュボーンを活用

「お時間をいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、私の販売シミュレーションに関するメタメタなデータについてご説明させていただきます」

そういって三田村さんは私をにらんだ。私は天井の蛍光灯を見た。

「まず図をご覧ください。これは、ビジネス・シミュレーションの分野でよく利用されるフィッシュボーン……魚の骨とも言われるもので、収益モデルの設計図を表しています。一般的に、このフィッシュボーンは細かく作りすぎないことがポイントで、主要なファクターのみで構成されています。そして黒塗りの部分がバリュードライバー……価値を生む原動力とでも訳しましょうか、我々企業が設定するパラメータです。このパラメータを変動させて、利益の予想を計算していくのです」

三田村さんは、図を見せながら説明を続けた。

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