4年目の移住者語る「田舎のルール」に今感じる事 池田町7カ条「都会風吹かすな」に隠れた感情

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もちろん、堆肥のための雑草や薪を入手するためにこうした活動に参加しているわけではなく、あくまでも副産物であり、地域の一員として生活環境を維持するための当然の責務と考えている。

ただ、最初からこうした好意はなかなか得られないかもしれない。50代の筆者も集落では「若者」であり、体力勝負の田舎生活では即戦力だ。荒れ果てた竹林を伐採してくれとか、薪ストーブを設置するのを手伝ってくれ、茶刈りを手伝ってくれなどとあちこちから声がかかる。お願いされれば、積極的に引き受けており、こうした相互扶助の精神が田舎暮らしでは重要だろう。

先日も、行政や警察の権力が十分には及ばない田舎らしい出来事があった。田舎では、治安や美観の保全は、住民が担っている部分が大きい。集落で窃盗事件があり、アルミ製の雨戸などが盗まれたが、集落の住民がいち早く不穏な動きに気づき、ナンバープレートを記録していたため、後日、警察に逮捕されたと聞いた。物騒な事件が増えている日本だが、共同体意識の強い田舎の集落での暮らしは治安面でも安心感がある。

田舎の住民の中には、都会暮らしへの憧れを抱いている人もいる。自宅の改築を依頼した地域の左官職人は、「都会に行きたかったけど行けなかった。なんでこんな山奥にわざわざ越してきたんかい」と本音を吐露した。田舎では、家を継がなければならなかったりして都会での生活を諦めた人も多い。

田舎は土地も家も広く、都会よりも自然に寄り添って暮らせる気楽さがあると感じている住人も多いが、「こんな何もないところによう引っ越してきたなあ」などと地域に対する自己評価が低い点も目立つ。こうした中で、都会出身の移住者はまず、わざわざ好き好んで田舎に引っ越してきた変わり者として好奇の目にさらされることになる。

「都会風」という表現に隠れた感情

実際、都会生活をドロップアウトし、同じような振る舞いで田舎での生活でもトラブルを続ける移住者がごくわずかだが存在し、地元住民の警戒感を生んでいるという側面もある。

特に、新型コロナウイルスの流行で、移住がブームになり、事前の調査などを怠ったために既存住民とトラブルになったり、「こんなつもりじゃなかった」と嘆くミスマッチ移住者が増えたりしたことも、池田町の広報誌の文面の背景には存在するかもしれない。

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