4年目の移住者語る「田舎のルール」に今感じる事 池田町7カ条「都会風吹かすな」に隠れた感情

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ある町の移住担当者は「コロナが始まって以降、移住者の数が倍増したのは嬉しいが、質の低下が顕著で移住者が地元住民との間で起こすトラブルの処理に追われている」とこぼした。

「都会風」という表現は、都会生活に対する憧れとともに、あえて都会と田舎とを分けて考えてしまう田舎の人々の発想に基づいているのではないだろうか。

これに対し、都会出身者の考え方は異なる。都会の人間関係が希薄なのは当然で、人権や女性の権利が声高に叫ばれる現在、個人の意思は尊重されるべきだと考えるのが多くの都会出身者であり、普遍的な価値観だとして、これを田舎の生活にそのまま適用しようとする人もいる。できれば、自治会などの煩わしい人間関係には巻き込まれることなく、静かに暮らしたいと願う移住者も多い。

「フリーライダー」が存在しにくい

ただ、田舎は数十年前まで共同で茅葺き屋根を葺き替えたり、災害があった場合には集落総出で人命救助に当たったり、被災した家を再建したりした歴史があり、共同体意識は都会では想像できないぐらい強い。

こうした活動がなくなった現在も、インフラの維持や草刈り、獣害対策など地域の一体的な取り組みがないと生活が立ち行かない面がある。誰かが引き受けなければ、その負担は身近な誰かが引き受けなければならないのが田舎である。都会のようにサービスや利便性を享受する「フリーライダー」が存在しにくいのが田舎だ。

池田町の広報誌で、こうした刺激的な表現が使われてしまったのは、共同体的に運営されている田舎の生活とは違う価値観を持った都会出身者と、都会に対する憧れとともに都会出身者の振る舞いが自己中心的と映る田舎の人たちの埋めがたい意識の違いが背景になっているのかもしれない。

しかし、人口の減少により移住者がいなければ、消えゆく運命にある田舎も多い。この広報誌の表現をめぐって、田舎の現実を率直に伝えるものとして評価する声がある一方、田舎の実態を示すものとして否定的に捉える声もある。田舎暮らしに二の足を踏む移住希望者も出てくるだろう。

田舎の人たちや行政は、移住者を呼び込むことで故郷の存続を望むのなら、都会出身者が願う暮らし方にできるだけ歩み寄るような対応が求められている。一方、都会出身の移住者も共同体的に運営される田舎の暮らしの在り方への配慮を忘れてはならないことを、池田町の広報誌は改めて考えさせてくれるものだろう。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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