大学に入ってからは「高校時代には通じなかった自分の興味の話が周囲の人にやっと全部通じ、共感してもらえた」という父親と同じ感動体験も味わい、自分の頑張りが報われたと実感できたそうです。
「見たことがない世界を見たかったから頑張れました」と語る彼女の人生は確かに、浪人を通して豊かになったように見受けられました。
そして、浪人を経験してよかったと思えることも話してくださいました。
「頑張りすぎないことも必要だと気づけたことです。3浪のとき、自分のペースで無理なく頑張ろうと思ってあまり予備校に行きませんでした。でも、その期間が自分の人生には必要だったのです。浪人時代に、勉強計画や課題設定をじっくり時間をかけて考えたことが今の仕事にすごくつながったと思います」
今、漫画家として作品を発表する傍ら、デザイナーをされているあららぎさん。現在、表現の世界に生きる中で、自分で計画を練った経験や、受験勉強・大学での勉強がとても役に立っているそうです。
「美術を学ぶ過程で想像力が培われました。私は、美術を知ることは万物を知ることだと思っています。美術は今まで吸収してきた自分の中の教養や経験から生み出すことなので、凄く思考を巡らせないといけません。だから、人の立場や物事の仕組みを考えた経験が、世の中にある建物・物体や、写真や絵に使われている色・形などがどうして存在するのかを理解できることにつながり、今の創作活動に生きています」
「すべての学問はどこかでつながっているのだと思います」と説明してくださったあららぎさん。
大学に行けることは当たり前ではない
そんな彼女の激動の受験生活は、著書『東京藝大ものがたり』でも鮮明に描かれています。つらい時期を経験して、今を力強く生きるあららぎさんだからこそ、大勢の人に届くメッセージがこもっていました。
「大学に行けるのは、当たり前のことではないと思います。美術関連の予備校代は高額で、芸術系の進路に進みたくとも親を説得しないといけないことも少なくありません。私も自分で予備校費用を稼いだように経済的に苦労をした人間なので、今、受験生をオンラインで教えています。金銭面で予備校に通えずに諦めようとしている受験生がいたら、ぜひTwitterでご連絡いただければと思います」
悩み、苦しみ、自分と向き合い続けたからこそ手に入れた優しさに、私も学びの本質を見た気がしました。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら