京大文学部卒の小説家が20年前に経験した小さな町の"学歴競争"、 《「現役東大」合格のライバルはなぜ「1浪京大」に負けたと思ったのか》

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東大
東京大学(写真:ニングル / PIXTA)
独特の世界観で熱狂的なファンの多い小説家・佐川恭一さんは1985年、滋賀県生まれで、京都大学文学部を卒業。新著となるノンフィクション作品『学歴狂の詩』では「天才」ともてはやされた子ども時代から有名私立高校、京都大学に進んだ自身の歩みを振り返りながら、「学歴」に囚われ、踊らされる人たちの悲喜交々をユーモラスに描いています。
本記事では同書より一部を抜粋・再編集し、「町一番の天才」を巡るエピソードを3回にわたってお届けします(本記事は3回目です)。
【1回目】"田舎の神童"が学歴至上主義に染まった原体験、「天才と勘違いした私は"学歴狂"になった」、塾でVIP待遇・ヤンキーからも一目置かれる存在に
【2回目】東大に現役合格した友人と京大に落ちた私の「決定差」、"学歴狂"の高校時代を振り返る、私は「スーパー学歴タイム」の真っ只中にいた

役場に自分の銅像が建つと本気で思っていた

前々回の記事では、滋賀の田舎町で私がいかに神童として調子に乗っていたかを紹介した。私の町には中学校が一つしかなく、また某R高を狙うような進学塾も当時はほぼ一択となっていたため、それらを制圧すれば普通に「町一番」を名乗れるような状況だったのだ。

私はペーパーテストで敵なしだった中学時代、自分がこのまま超エリートコースを驀進(ばくしん)して圧倒的実績を積み上げていけば、遠くない未来に町役場前に自分の銅像が建ってもおかしくないと本気で思っていた。

ド田舎出身の方にはわかってもらえると思うが、非常に小さな町だったため、私が高校に進学した後も出身中学や塾の進学実績、そして生徒たちのレベル感は謎のネットワークから伝わってきた。

私の入手した情報によれば、某R高特進コースの合格者は毎年出るものの、私のように東大寺学園やラ・サールを撃破する者は出ていないようだった。中学の先生たちにも私の印象は強く残っていたらしく、「神童佐川」の大学受験がどうなったのかを気にしている者も多かった。

なぜそんなことがわかるかと言えば、私には5歳下の妹がおり、同じ公立中学校に通っていたからである。かわいそうなことに、妹は私を知る先生たちから「お前の兄貴、大学受験どうなった?」と聞かれまくったという。

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