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「物価の権威」渡辺努教授が東大を去る前に何を語り残したのか?デフレの罪、異次元緩和の失敗、そしてお金の未来...最終講義への徹底反論①

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渡辺努氏は1959年生まれ。日本銀行、一橋大学教授を経て2011年から東京大学大学院経済学研究科教授。2025年4月より自身が創業した株式会社ナウキャスト取締役(撮影:梅谷秀司)
物価研究の権威である渡辺努氏が2025年3月末、東京大学大学院経済学研究科を退職した。リレー連載「新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場」が人気の小幡績・慶応義塾大学大学院教授は渡辺氏と旧知の仲。東京大学経済学部で根岸隆教授のゼミの先輩・後輩にあたる。昨年は東洋経済オンラインで対談も行っている。
【前編】「物価が上がらなければいいのに」と嘆く人たちへ
【後編】日銀は「円安」「国債の山」「次の緩和」をどうするか
3月28日に東京大学で行われた渡辺氏の最終講義(動画はこちら)に対し、小幡氏が愛を込めて3回にわたり"徹底反論"する。初回はまず、最終講義の中身を小幡流にレポートする。
※本記事は2025年4月9日7:00まで無料の会員登録で全文をお読みいただけます。それ以降は有料会員限定となります。

渡辺努先生は、恩師を除き、私が最も尊敬する経済学者である。彼の最終講義では質問を受け付けてもらえるはずが時間切れでその機会がなかったので、ここで誌上論戦を挑みたい。

まず、渡辺先生の最終講義は以下の3点に要約できる(私が勝手に突っ込んだ書き方をしているところもあるが、本質は外れていないと思う)。

第1に、なぜ物価が大事か。

「デフレの罪」と日本経済の明るい未来

それは、価格というものは、経済において最も重要なものである。市場による資源配分メカニズムは価格によるものであるから、その価格設定およびその変更が妥当になされないと経済は死んでしまう。そして、日本経済においては、過去30年間、この価格メカニズムが死んでいた。だから、経済は停滞していた。これがデフレの罪である。

価格の復活、価格の復権こそが最重要であり、2022年以降、それは動き始めた。したがって、日本経済の未来は明るい。

第2に、なぜ価格が動かなくなり、その状態が続いてしまったのか。

企業が消費者に対して自社製品の価格支配力を失い、価格変更できないという状態で凍り付いてしまったからである。これは、マクロ的なデフレが生じたことにより生み出された状態で、1990年までは日本経済では見られなかった現象である。

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