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「物価の権威」渡辺努教授が東大を去る前に何を語り残したのか?デフレの罪、異次元緩和の失敗、そしてお金の未来...最終講義への徹底反論①

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かつてグリーンスパン(FRB元議長)が見抜いていたように、だからデフレに陥らないように金融政策を行う必要があり、日本はそれに失敗した。デフレのまま金利がゼロになってしまい、デフレを解消できず、かつ金利までもがゼロに張り付いて、金利機能を失ってしまった。

物価、賃金、金利を復活させることが日本経済への処方箋である。その時に障害となるのが、ゼロ金利制約である。

マネーの金利をゼロ以下に下げられないというゼロ金利制約はいわば関所のようになっていて、経済の効率的な資源配分を阻害している。したがって、ゼロ金利制約の除去が政策的に必要であり、それは可能であると思うから今後実現するよう提案していきたい。

第3に、その金融政策への提言である。

お金が減っていく「負の金利」こそ必要

まず、ゼロ金利制約を根こそぎ除去する。マネーのうち、リザーブ(日銀準備預金)にはプラスの金利を付けることもマイナス金利も可能になった。あとは、現金にマイナスの金利を付けることである。債券もリザーブも日銀券も、すべての金利がプラスマイナス対称に自由に動けるようにすることが、経済の効率化をもたらすことになる。

異次元緩和が失敗した理由のひとつは、日銀券にマイナスの金利を付けなかったことである。これはできないのではなく、物理的にもできる。できないというのは、これまでの経験からの抵抗感からくる見たことがないことへの不安にすぎない。

したがって、異次元緩和は失敗したが、その要素である、マイナス金利とバランスシートポリシー(国債をはじめとする資産買い入れ政策)を仕舞ってしまうのはもったいない。せっかく開けたパンドラの箱ーー皆はネガティブだと思っているが、ポジティブの可能性もあるーーを新しい金融政策の手段として使っていくことに挑戦し続けていくべきだ。

現金(日銀券)にマイナス金利を付けること、これはデジタルの世界では物理的な制約はないからできる。次に、バランスシートポリシーは、財政ファイナンス的だと批判されても、ゼロ金利という関所がなくなれば、一つ金融政策の手段が増えたことであるから、活用すべきである。

この3つのポイントを別の角度から言い直してみる(これは渡辺先生のお話の進め方とは異なる小幡解釈であるが、書き方の問題であって、本質は違わないはず)。

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