必ずしも、意図的に苦手な分野を避けていたわけではありません。会議に企画案をかける際、自分が強い分野と、ちょっと弱いかなと思う分野の提案も一緒に書いて出してはみます。ところが、かなり時間をかけて作った企画でも、「弱い分野」のものは通らず、ほんの5分で書いた「強い分野」の提案が、「こっちでいこう」「これ、来月書ける?」とすんなり通ってしまうのです。
生産性戦略のワナ
そうやって、自分のわかる分野+わかる分野のちょっと延長、くらいを扱って仕事が回っているうちは、労働時間が短くても成果が出せます。
でも、だんだん同じ角度から記事を書くのはネタ切れもするし、自分としても新しい挑戦をしたくなってきます。また、会社は基本的に若手に対しては「さまざまな分野を担当しながら、成長していく」ことを求めています。
ところが、まだ子どもが小さく、残業を毎日しますというふうにはしたくない。2人目を産むことも考えたい。でも、仕事のクオリティは落としたくない。恥ずかしい仕事をしたくない。
「でも、でも、でも」。そんな逡巡の下で仕事をしていた育休後の1年間。部署にいる年数はそれなりに長くなりつつありましたが、上司との面談で、私の口から「次は新しい部署で、新しいチャレンジをしたい」という言葉はついぞ出てきませんでした。
新しい部署に行って、取材先も同僚も知らない人たちばかりで、担当を持って、短い時間で、質の高い記事を書く……。それは難しいだろうと思いました。
「あー、ちょっとごまかしちゃったな」「ここ確認甘いんだけどな」と思いながら記事を出すのは、耐えられない。同じ時間的資源があれば絶対勝てるような試合で、「この程度のレベルなのね」と思われるのも不本意。
そういう性格上、もし新しい仕事に異動したら、おそらく子どもとの時間を削って、頑張ってしまいそうです。そうすると、親である自分に対して、「それでいいの? 子どもと夜、会えなくなるかも? 2人目は先延ばし??」という疑問がふつふつと湧いてくる。
だから、自分で手を上げて積極的に新しいチャレンジをする気が起らない。本の中などで、女性たちに「ちゃんと会社の中で声を上げて!」「上司とコミュニケーションし、やりがいを確保すべし」と言っている私なのに、気がつくと「当面は、この部署でいいです」などと口にしている。
そう、結局、自分がさんざん分析してきた「ジレンマ」に見事にはまっていたのです。
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