日本の女性活用の「不都合すぎる真実」 衝撃! 女性の出世には「長時間労働が必須」だった

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 本連載では夫婦関係について「家庭内」の出来事を中心に考えてきました。今回は識者のインタビューを基に「家庭外」、つまり「勤務先との関係」についてみていきます。
 登場するのはシカゴ大学社会科学部の山口一男教授。山口先生は社会統計学の専門家で、近年は働く女性を取り巻く課題や、仕事と家庭生活の調和といったテーマの研究も行い、日本社会へ向けた提言も行っています。経済合理性を重視しながら、社会的不平等に鋭く切り込む分析が特徴です。
日本の女性活用、いったいどうしたらいいのか?シカゴ大学社会科学部の山口一男教授に聞きます

たまの「ノー残業デー」には意味がない!

――当連載では「夫婦関係」に着目していろいろな事例を紹介してきました。根底にあるのは、仕事と家庭生活の調和を取るためには、どうしたらいいか、という問題意識です。夫婦のコミュニケーションを積み重ねることで改善する例もありました。ただ、職場環境によっては「夫婦の話し合い」だけでは問題は解決しません。

残念ながら今のところ、「イクメン」は限られた範囲にとどまっているように思います。やはり、雇い主の理解がないとイクメンを実践するのは難しい。そして、夫婦のありようは、夫の働き方によって左右されます。夫婦関係を改善するためには、日本の働き方を変える必要がありますね……。

サラリーマンの働き方改善というと、よく出る議論に「ノー残業デー」があります。これに関する研究成果をご紹介しましょう。慶応大学商学部教授の樋口美雄先生たちが「残業あり」と「残業なし」の日で夫の家事時間を比べたら、変わらないことがわかったのです〈戸田淳仁・樋口美雄「労働時間や家事時間の長い夫婦ほど出生率は低いか」(出典:樋口美雄・府川哲夫編『ワーク・ライフ・バランスと家族形成』東京大学出版会2011年、11章)〉

たまに残業なしの日があって夫が家に帰っても、自分のくつろぎ時間とかに使ってしまうのです。たまたま時間ができても夫の家事時間は増えないし、夫婦のコミュニケーションも増えない。残念ですが、実証研究の結果は、そういうことになっています。

――確かに「早く帰っても家に居場所がないから、飲んでから帰る」という男性管理職の声を聞きます。

そうですよね。だから、残業は「たまに」なしにするのではなく、その時間を計画的に用いられるよう「恒常的に」なくさないと意味がないのです。

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