日本の女性活用の「不都合すぎる真実」

衝撃! 女性の出世には「長時間労働が必須」だった

近年、日本企業もさまざまな働き方改革を取り入れていますが、うまくいかない例も多い。たとえばフレックスタイム勤務。コアタイムを設け、出社・退社時刻を個人の裁量に任せる仕組みですが、日本ではなかなかうまくいきません。

山口 一男(やまぐち・かずお)
シカゴ大学ラルフ・ルイス記念特別社会学教授。経済産業研究所客員研究員。
1946年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。総理府統計局(当時)勤務を経て、1981年にシカゴ大学社会学Ph.D.。コロンビア大学助教授、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 准教授を経て1991年よりシカゴ大学教授。2001年にグッゲンハイム・フェロー。2003年に米国科学情報研究所(ISI)より,社会科学一般の部で1981~99年に最も学術論文が引用された250人の学者のひとりに認定される。2008~2011 年シカゴ大学社会学科長。2012年には経済産業省の「企業活力とダイバーシティ推進」専門委員会の座長を務める。学術論文(主として英文)数は100を超える。日本語の著作に『ダイバーシティ~生きる力を学ぶ物語』(東洋経済新報社)、『ワークライフバランス 実証と政策提言』(日本経済新聞出版社)がある。専門は就業と家族、社会的不平等、社会統計学、合理的選択理論。

ひとつの問題は、欧米のように「前倒し」にしないこと。せっかくフレックス勤務を取り入れても、日本企業で働く人は「遅く出勤して遅く帰る」ことが多い。それでは主として育児責任を担う女性社員にはメリットがありません。

ある日本企業の社長は、IT関係職種での「フレックスタイム勤務で生産性が落ちたので、やめた」そうです。この企業では同僚と顔を突き合わせてお互いに確認し合いながらでないと仕事が進まないから、だそうです。これを聞いて、日本企業は仕事のやり方そのものを変えないと、柔軟な働き方は有効活用できない、と思いました。

日本企業は共同責任を習慣化していますね。共同責任ですから、いつでも調整し相談する。その結果、長時間労働が常態化している。これは、日本人正社員男性にはなじんだ働き方ですが、自分の時間をより大事にする女性や外国人の活用には、まったく機能しないでしょう。

1990年代、米国も「誤った運用」をしていた

――「日本企業」の問題をご指摘いただきましたが、米国はどうでしょう?

たとえば、前述のフレックスタイムをやめた日本企業と同職種でも、米国企業なら、週に1日程度の顔を合わせる会議で間に合います。通常は在宅勤務を含め自分の仕事時間の使い方は自分で調整できるのが当たり前です。分業が進んでおり、メールで仕事の用務のやり取りするのも普通で、細かい部分は個人に任せる風土も浸透しています。

ただし、米国にも試行錯誤の時期がありました。1990年代の企業社会では、「ファミリーフレンドリー」な企業が広まった一方、間違った応用の仕方もあったのです。

たとえば子育て中の女性管理職に対して、男性上司が「家庭の用事があるだろうから6時からの会議には出ずに、帰っていいよ」と配慮する。けれど、それでは女性を排除し遅くまで職場にいる男性だけで、意思決定がされてしまう。ワーキングマザーの管理職は、意思決定に参加できないのに「自分のいないところで決まった結果」には従わねばならないのはおかしいと、改善を求めたのです。その結果、意思決定の会議は午前10時から午後3時ぐらいまでの時間にされる慣行ができてきた。

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