「世の中は不条理」と考える人ほどプラス思考な訳 トップランナー3000人超への取材で見えたもの

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歴史小説から現代小説までベストセラーを次々に出している高名な作家に取材したとき、厳しい言葉をもらったことがあります。「作家になるまで苦労をされたのですね」という私の言葉に、彼は目を見開いて、反論されたのでした。

自分は苦労なんてしていない。本当の苦労というのは、人間を圧しつぶすほど強烈で、どんなに意志の強い人間もつぶしてしまう。作家になるまで苦労した、などという安易な物語をねつ造するのは、世の中をナメた考え方だ、と。

彼はこうも言っていました。若い人に言っておきたいのは、すぐに結果を求めようとしないことだ。今やっていることの結果が、明日出ることはない。そして、傷つくことを恐れないこと。そもそも人生は血まみれ、泥まみれ、汗まみれなのだ、と。

人生は必ずしも思い通り、計画通りにいくわけではありません。むしろ、いかないことのほうが多いかもしれない。思ってもみないことが起こる。だから問われてくるのは、そういうときにどう対応できるか、なのです。

私自身、苦しさは当たり前なのだと思えるようになった30代から、人生が変わりました。ラクして生きられるなんてあり得ない、努力は必ずしも報われない。そう思っていれば、そのつもりで動けるようになる。覚悟して生きられるようになるのです。

自分の可能性にフタをするな

「そんなこと、できるわけないじゃないか!」「映画やドラマじゃあるまいし」「うまくいくなら、とっくに誰かがやってるはず」……。

何か新しいことにチャレンジしようとしたら、こんなふうに反対された、という人は少なくないかもしれません。そして次第に、自分の可能性にフタをするようになる。奇跡なんて、自分に起こりっこない。あれは遠い世界の人たちの話だ……。

しかし、本当にそうでしょうか。実際には、たくさんの人たちに奇跡のようなことが起きている、という事実と向き合う必要があります。私はそれを、取材でたくさん耳にしてきました。

これ以上あり得ないタイミングで、いい出会いがあった。驚くべきところでアイデアが降ってきた。絶体絶命のピンチで救世主が現れた……。一度でもそういう経験をした人たちは、自分の可能性を信じるようになります。

実は、私自身がそうです。会社が倒産し、路頭に迷ってもおかしくなかった。ところが望んでもいなかったフリーランスの仕事に就くと、やがて売れっ子ライターと呼ばれるようになり、著名人に何千人も取材したり、40冊以上も本を書くようになった。

20代の頃の私を知っている人からすれば、まさに奇跡だと思います。

「ノミの天井」というエピソードを聞いたことがありますか?

40センチでも50センチでも跳びはねるノミを、高さ20センチの透明な瓶に入れて、ガラスのフタをする。ノミは高く跳ぼうとするが、20センチで天井に当たってしまうので、そのうち、19センチくらいまでしか跳ばなくなる。

すると、ガラスの天井を外しても、天井があると思い込んでいるノミは、19センチしか跳ばない。本来なら、30センチでも40センチでも跳ぶ能力があるのに、です。「これはこういうもの」「あれは遠い世界の人たちの話」と諦めるのは、まさにこのノミと同じだと私は思います。自分の可能性に、フタをするべきではないのです。

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