「20代の転職」30代超がわかってない今どきの事情 コロナ禍理由に「30歳までに方向性を決めたい」

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吉村さんは言う。

「私が転職する、というのをSNSで友人に伝えた時に、けっこういろんな人から『話を聞かせて。自分も考えているから』というメッセージをもらいました。今の時代、入社後3~4年目は最初の転職期なのかもしれないですね。私自身は同じ会社に長く勤めることにもさまざまなメリットがあると考えていますが、特に最近の若手世代では、転職をしている人のほうがキャリアに多様性を持たせられる等の前向きなイメージがあるのかもしれない、とも思います」

「30歳になる前に、1つ転換期を迎えるということは意識していました」。これは樋口さんの弁。「30歳は、社会人になって7年ぐらい。このうちの3年は長いですし、コロナ禍の先行きは不透明ですが3年があっという間にこのまま過ぎることもありうる。ここに焦りがありましたし、20代をうまくマネージできないと、30代以降を充実させることはできない。これは、同年代で多数派の意見だと思います」

今のままでは斜陽産業になりうる

若いうちに外に出るのは選択肢の1つ

樋口さんは転職することを伝えた時、当然ながら慰留されたが、上司も業界の課題を理解しており、最後はエールとともに送り出してくれたという。「銀行という産業は、今のままでは斜陽産業になりうる。若いうちに外に出るのは選択肢としてあるだろう」というのが上司の言葉だった。

そのぐらい、若手の転職は大企業にとっても当たり前のことになり、新しい現実として受け入れられているとも言える。ここまで述べてきたことに、「若手の転職なんて、珍しくもない。当たり前じゃないか」と感じる向きも少なくないだろう。

しかし、私がここでお伝えしたいのは一般論ではない。30~50代の先輩あるいは上司が目をかけている能力の高い部下が、ある日突然、退職を切り出すことがありうる、ということだ。

エン・ジャパンが運営する総合求人サイト『エン転職』がこの10月に実施したアンケート調査によれば、「本当の転職理由を(会社・上司に)伝えなかった」という転職者が43%を占めた(回答者数1万0432名)。これは、日頃からその思いに耳を傾けることが少なく、若手の本当のWILLに気づかないケースが多い、ということの反映なのではないだろうか。

コロナ禍における転職のリアルを追っています。画像をクリックすると連載一覧ページにジャンプします
間杉 俊彦 フリーライター

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ますぎ としひこ / Toshihiko Masugi

1961年東京生まれ。1986年ダイヤモンド社に入社、週刊ダイヤモンド編集部に配属。記者として流通、家電、化学・医薬、運輸・サービスなどの業界を担当。2000年に同誌副編集長。2006年より同社人材開発編集部副部長として研修教材や人材育成に関する書籍の編集を担当。2019年3月に退職し、現在フリーライターとして活動。編集を担当した主な書籍に『組織開発の探究』(中原淳、中村和彦著、ダイヤモンド社)、『ヤフーの1on1』(本間浩輔著、ダイヤモンド社)。ライティングを担当した書籍に『プロフェッショナル広報の仕事術』(高場正能著、日本経済新聞出版)などがある。

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