コロナ禍の3年で、年代を問わず転職者が増えている。先々が見通しにくい不安感と、業績の停滞感のなかで、より手応えのある仕事を求める動きは、特に意欲ある若手社員に顕著だ。そこには、上の年代にはなかなか理解しにくい、自分が成長することへの強い思いがある。本稿では、2人の20代に話を聞いた。そこで見えてきたのは、20代をキャリア模索の期間と捉え、自らの成長に最適な場所を求める貪欲な姿だった。
「このままいくと20代の貴重な時間を
無駄にしてしまうのではないか」
樋口剛史さんは2021年1月、5年間務めたメガバンクを辞め、AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」を主事業とするリーガルオンテクノロジーズに転職した。
安定した大企業からスタートアップへの転職は、かなり思い切った決断ではないかと思うが、樋口さんは「コロナ禍で、自分の成長が止まってしまうのではないかと考えました」と転職理由を語る。どういうことなのだろうか。
2016年に新卒でメガバンクに入行した樋口さんは、最初の2年半を支店営業として過ごし、3年目に本店に異動。デリバティブ預金などの法人営業を担当するようになった。
「社会の仕組みを知ることができた、という意味で、支店での経験も、本店での業務も、とても貴重なものでした」
何事もなければ、メガバンクでの充実した仕事を、いましばらくは続けていたかもしれない。しかし、コロナ禍が、その思いを変えた。
「業務量が激減したのです。こういった有事の際には、法人のニーズとして金融商品の優先順位は下がります。その状況であらためて自分のキャリアを見つめ直したときに、このままいくと20代の貴重な時間を無駄にしてしまうのではないか、と強く思いました」
20代のビジネスパーソンが、みんなそのように感じるのかどうかはわからない。しかし、樋口さんは30歳ぐらいまでにキャリアの方向性を決めたい、とかねて考えていた。
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