「人類滅亡」今後数十年の取り組みが鍵となる理由 私たちホモ・サピエンスが握る「人新世」の命運

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数十年前、住民を脱出させるヘリコプターの発着に使われたサッカーグラウンドも、若い木々に覆い尽くされている。自然が自分たちの領土を取り返したのだ。

街や壊れた原子炉を含むその土地は、動物たちの世にもまれな安住の地になりつつある。生物学者が街の窓に取りつけた自動撮影カメラでは、キツネ、ヘラジカ、シカ、イノシシ、バイソン、ヒグマ、タヌキといった動物の繁栄のようすが記録されている。数年前には、ここに絶滅危惧種のモウコノウマが数頭放たれた。今では、その数も増えた。猟師に狙われる心配がないことから、オオカミの群れすら棲みついている。

これを見れば、人類がどれだけ重大な過ちを犯そうとも、自然はみずからの力で回復することがわかる。そもそも自然界は過去に何度となく、大量絶滅を乗り越えているのだ。

人類には未来を変える力がある

しかし人類に同じことは期待できない。人類がここまで発展を遂げたのは、地球上で最も賢い生物だったからだ。しかし今後も長く存続するためには、知性だけでは足りない。知恵が求められる。

ホモ・サピエンス(「賢い人間」という意味だ)は、今こそ、過去の過ちから学んで、その名にふさわしいところを見せなくてはいけない。それは現代に生きるわたしたちに課された大いなる責務だ。

臆することはない。必要な手段はすべて揃っているし、何十億人の頭脳という助けも、自然の計り知れないエネルギーという助けもある。

それだけではない。地球上の生物でおそらく人間だけに備わっている能力がある。未来を思い描いて、その実現に取り組む能力だ。

わたしたちはこれまでに地球に与えた損害を償って、人間活動の影響を管理し、文明の発展の方向を見直すことで、ふたたび自然と調和した種になれる。

わたしたちに足りないのは、そうしようとする意志だけだ。安定した自分たちの家を築き、遠い祖先から受け継いだ豊かで健全な、すばらしい世界を取り戻すためには、今後の数十年が最後のチャンスになる。

人類は今、知られる限り生命体が存在する唯一の星であるこの地球に、これからも住み続けられるかどうかの瀬戸際にある。

(翻訳:黒輪篤嗣)

デイヴィッド・アッテンボロー 自然史ドキュメンタリー制作者

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David Attenborough

英国を代表する自然史ドキュメンタリーの制作者。BBCの画期的なシリーズを世に送り出し、世界的な自然史ドキュメンタリーの作り手として確固たる名声を博した。代表作に《地球の生きものたち(Life on Earth)》(1979年)、《ライフ・オブ・バーズ/鳥の世界(The Life of Birds)》(1998年)、《ブルー・プラネット(The Blue Planet)》(2001年)、《アッテンボローのほ乳類 大自然の物語(The Life of Mammals)》(2002年)、《プラネットアース(Planet Earth)》(2006年)などがある。

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