高学歴化でも「日本の労働生産性が上がらない」謎 オックスフォード大の教授が指摘、海外との差
下記図に示すように、2007年から17年の間に、生産年齢人口の主軸と考えられる40代の男女雇用者のうち、大卒以上がおよそ100万人増えた。経済学の教科書的知識に従えば、雇用者の高学歴化は人的資本の増大を意味し、社会全体の労働生産性を高める可能性を示す(外部配信先では図や表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
その一方で、国際的に見ると日本の労働生産性や実質賃金の停滞が指摘されてきた。この事実に照らすとひとつの謎が浮かび上がる。労働市場が交換の場であり、高学歴化により人的資本の価値が高まれば、労働生産性を高め、その対価である賃金上昇に結びつくはずだ。
市場が競争の場だとしても、優勝劣敗=市場における淘汰という原理的な理解を適用すれば、社会の高学歴化は、人的資本市場から学歴の低い人びとの「退場」を促し、それが社会全体の高学歴化に拍車をかける。
そして他の先進国では、生産年齢人口の高学歴化が進み、それにともない労働生産性が上昇した。人的資本の高度化が、変化する経済や産業のニーズにマッチした結果と見ることもできる。
非正規雇用の拡大説
だが日本ではこの20年、労働生産性も賃金の上昇も生じなかった。なぜか。
ひとつの答えは、非正規雇用の拡大説である。非正規雇用では人的資本の価値(知識・能力)を生かしきれず、低い生産性に留まる。だから労働生産性の上昇に結びつかないという説明だ。
この説は部分的には正しいが、当たらない面もある。2007年から2017年の間に大卒雇用者(四大卒のみ)のうち、非正規職は約30万人増えたが、正規職も50万人以上増えた(下記図参照)。
つまり、正規職でも人的資本の高学歴者のストックが大きく増大していたからである。その分は少なくとも生産性の上昇に寄与したはずだ。
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