今のご時世、本人が望まない仕事を与えたら辞めてしまうのではないか、と心配するかもしれない。
私は、会社が従業員の長期雇用に覚悟を持ち、さまざまな工夫によって従業員を飽きさせなければそうそう辞めないのではないかと考えている。
2つ目のアプローチは、人を基準とした職能資格制度から仕事(ジョブ)を基準とした制度に変えて、キャリア形成やスキルの習得は従業員に委ねることである。
このようにすると、理屈のうえでは、企業は従業員に対してその企業でしか役に立たないスキルの教育にしか投資したくなくなる。教育によって他社でも使えるスキルが向上したら他社に転職してしまうからである。
成長を応援してくれるかどうかは重要
しかし現実的にはそんなことは言っていられない。自分の成長を応援してくれるかどうかは、従業員が企業に残るかどうかを判断するうえで重要なポイントだからである。
そこで企業は、従業員にさまざまな教育投資をしつつ、それによりスキルが上昇した従業員が他社にいかないように、報酬面や仕事の与え方を含めた魅力的な会社になることを目指すべきなのである。
例えばソニーは、ジョブ型の人事制度を長年にわたって運用し、従業員に自らのキャリア形成やスキルの習得を委ねて個の自立を図っているが、従業員の定着率は非常に高い。
これは同社がさまざまな「場」を用意し、従業員の成長を会社がサポートしているからであるといえよう。
企業の支出する教育訓練費はバブル期以降減少し、製造業の国際比較でもその水準は低い。
ジョブ型の人事制度が標準的な欧米企業のほうが、人を基準とする人事制度を持つ日本企業よりも人的資本への投資が高くなっている。
今後日本企業の人事制度がジョブ型に移行しても、そしてこれまでの人事制度を維持するならばなおさら、人への投資を増やすべきであろう。
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