和田秀樹「要介護になる人・なりにくい人の差」 受験勉強でもシニアライフでも根性論はいらない

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話はテーマから少しそれますが、これからAI時代になるのは間違いなく、社会的な議論はいろいろありますが、使い方によっては私たちの行動をとても楽にしてくれるものになるでしょう。

例えば、無人の自動運転の車が普及すれば、オンラインで配車を依頼すれば、短時間かつ安価に人を目的地に運んでくれるようになるはずです。乗車しただけで、そのときの気分や体調に合わせて最適な料理を供してくれるレストランに連れていってもらえるかもしれません。あるいは、最適な交流ができるサロンのような場にも送り届けてくれるかもしれません。

すべてAIが人間の行動を支配するようで怖い気もしますが、どんな技術もメリットとデメリットがあるものです。要は使い方が重要なのです。AIを活用して行動する負担が10分の1になるならば、私は積極的に利用すればいいと思います。フレイルサイクルに入らないために利用できるのであれば、それは積極的に使うべきでしょう。

ここで伝えたい一番のポイントは、意欲を大事にしながら、あらゆる手段を使って行動のハードルを下げることの重要性です。言い換えると、ハードルを下げる工夫や努力をすることが、少しの意欲でも行動に結びつきやすくする最大のポイントになるのです。

健康寿命を延ばす一番効果的な方法

シニアライフに精神論は不要です。もっというと、私は人生に精神論はいらないと思っています。これまでに私は多くの本を書いてきました。最初に社会的に話題になったのは『受験は要領』という本です。1980年代の後半に書いたものです。大学入試をいかに楽に突破するかという内容で、例えば特異なセンスが求められる数学については、「苦手なら答え(解法パターン)を覚えればいい」というようなことを書いて物議を醸してしまいました。

これについては「役立った」と評価される一方で、「この考え方は間違っている」と強く批判されることもありました。私は、この批判に対して反論したかったのですが、なかなか説明できる機会を得られませんでした。

当時、この本で私が一番伝えたかったメッセージは、そのころに見られた教育における精神論(根性論)のおかしさについてでした。苦労をしなければ学力は伸びないと考える風潮に対して「それは間違っている」と訴えたかったのです。テーマから少しそれてしまうのですが、間接的に関連するので少しおつき合いいただければと思います。

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