食中毒の元凶「アニサキスと戦う男」の壮絶な実験 アジの加工品を作る水産加工会社の試行錯誤
立ち上がった、アジの加工会社
「創業当初から我々にとってはアキレス腱でしかない」と井上さんが話すアニサキス。体長2~3cmほどの細長く白っぽい幼虫で、主に魚の内臓に寄生する。寄生した魚を生で食べると、その数時間後に腹痛などを起こすことがある。それがいわゆる「アニサキス症」という食中毒だ(関連記事)。
寄生する魚はサバやイワシ、アジ、サンマなど。その多くは刺身で食べると美味しい魚たちだが、見方を変えると、魚を刺身などに加工する水産加工業界にとって、アニサキスは厄介者以外のなにものでもない。
この厄介者と長年にわたって闘ってきたのが、井上さんが代表取締役を務めるジャパンシーフーズだ。創業35年ほどになる同社は、主にアジの加工品を大手スーパーに卸している。
アニサキス事故を起こすと、卸先との取引を停止されることもある。過去に同社はアニサキス事件を複数件出した月があり、そのときは月間の取引額が20%、金額にして5000万円が減ったという。
アニサキスはほかの食中毒の原因である細菌などと違い、魚の内臓や筋肉に棲みついている。
「O157などやウイルスなどは衛生環境を徹底的に整えれば防げる。しかし、アニサキスは原料の魚の搬入時点で身に潜ってしまっていたら、どうしようもない」(井上さん)
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