食中毒の元凶「アニサキスと戦う男」の壮絶な実験 アジの加工品を作る水産加工会社の試行錯誤

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アニサキス退治へ、同社はこれまで壮絶な努力を繰り返してきた。最初に、先代の代表取締役が編み出したのが、紫外線を魚に照射して、アニサキスを見つけるという方法だ。

「アニサキスの角皮(クチクラ)に含まれるタンパクは紫外線に反応して光るんです。ですので、目視で見つけて取っていきます」(井上さん)

紫外線でアニサキスを見つけている(写真:浪平さん提供)

これは今でも続けている対策だが、身に潜っているものは見つけるのが難しく、完全に駆除することはできない。

井上さんの8年にも及ぶ戦いの中身

100%アニサキスのリスクを取り除いて、安全な商品を提供するためにはどうしたらいいか。井上さんの挑戦は8年あまりも続いた。その内容は次の通りだ。

【挑戦1】X線では見えないということを知っていた井上さん。複数の波長のX線を照射する装置や、より強力なX線を照射する最新の装置を試すも、虫体と魚体のたんぱく質の原子組成がほぼ一緒だったため、画像に映らず失敗。

 

【挑戦2】近赤外線やテラヘルツ波を出す装置で再チャレンジ。しかし、こちらもアニサキスを撮影できず、失敗。これにより透視画像でアニサキスを見つけることを断念。

 

【挑戦3】アニサキスが死ぬ薬剤の開発を目指す。しかし食品添加物の認可を取るのに数年単位、1000万円以上の費用がかかるとわかり諦める。そもそも「身に潜ってしまったアニサキスは薬品では殺せない」ことに気づく。

 

【挑戦4】超音波装置を使って、アニサキスを物理的に殺そうと思い立つ。洗濯機ほどの大きさの業務用の超音波装置をレンタルして実験したが、アニサキスは死なず、アニサキスを入れた水が温まってお湯になるだけだった。

 

【挑戦5】圧力を使ってアニサキスを殺そうと、アジの身ごと超高圧装置にかける。アニサキスは圧死したが、当然、アジの身もつぶれてせんべいのようになってしまった。
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