食中毒の元凶「アニサキスと戦う男」の壮絶な実験 アジの加工品を作る水産加工会社の試行錯誤

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【挑戦6】国内で販売が規制されているような超高電圧のスタンガンを購入。アニサキスに当てたところアニサキスが動かなくなる。しかし、数日後に蘇生してしまったため、失敗。だが、このときに電気に活路を見いだす。

 

【挑戦7】養殖マグロを陸に揚げるとき、気絶させるために使う電気ショックをアジに当ててみる。養殖場のスタッフの厚意でマグロに当てる数倍の量の電気を当てたが、中まで電気がとどいていなかったようで、アニサキスはピンピンしていた。

 

【挑戦8】電気ショックより強い電力を当てればよいのではないかと考え、某大学の協力で人工の雷を使った実験を行う。しかし、水槽に入ったアジに雷の電気が流れず、水槽の上に雷が走っただけだった。

大まかに紹介しただけで8連敗。アニサキスは井上さんが考える以上に手強い相手だった。

井上さんは過去の挑戦を振り返り、「人工雷については、協力いただいた研究室の教授に、『アジに人工雷が流れたら、アジが爆発するよ』といわれていたので、まぁ、しょうがないかという感じでした」と苦笑する。

だが、こうした努力を惜しまない姿勢が、熊本大学の浪平さんの研究する特殊な電気エネルギー、パルスパワーに結びついた。人工雷の実験に関わった1人から、「電気でアニサキスを殺せる人がいる」と浪平さんを紹介されたのだ。井上さんはすぐに浪平さんに電話をかけ、こう話した。「パルスパワーで(アニサキスを)解決できませんか?」。

パルスパワーとはいったい?

ところで、パルスパワーとはどんなものか。浪平さんの説明によるとこうだ。

電子レンジやドライヤーなどで使う電力は、一定の大きさを一定時間流している。対して、パルスパワーは短時間に大きな電力を流す。これにより1億ワットというような信じられないくらいの電力が生まれる。弱い力で岩を押してもびくともしないが、一瞬だけグッと力を入れると岩は動く、という原理だ。

パルスパワーとは(グラフ:浪平さん提供)
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