予想外だった彼女の行動
2025年末。一年を振り返っていて、最も濃い記憶として思い起こされたのは、大きなニュースでも仕事の成果でもなく、ある旅先でのワンシーンだった。
昨年は、いろんなことがあった。日本で初の女性総理大臣が誕生し、AIがさらに進化して人々の働き方が大きく変わり始めた。個人的にも、国内外に取材に出かけて様々な人に会い、フリーランスになってから準備していた本も出版した。
だが、一番心に残っているのは、台湾・高雄の地下鉄で出会った名前も知らない女性のことだった。
12月の夜、高雄の地下鉄に乗った。平日のその日は、車内は仕事や学校帰りの地元の人たち中心で、立っていても他の乗客との肩が当たることはない、窮屈ではない程度の混雑具合だった。
乗車してドアが閉まり、電車が動き出すと、足元の床がベタベタと汚れていることに気づいた。テイクアウトしたご飯の汁か何かがこぼれているようで、茶色い液体が散らばっていた。
私は「運が悪いな」と思い、その場所から少し離れた。周りの乗客も同じように、その汚れを避けて立っていた。誰も近づかない。汚れた床の周りに、直径1メートルほどの空間がぽっかりとできていた。
次の駅で、30代くらいの女性が乗ってきた。カジュアルなジャケットを羽織り、肩にトートバッグをかけている。仕事帰りだろうか。彼女は車内を見回し、空いているその場所に自然に立った。
私を含めた何人かが、なんとなく横目で彼女を見ていた。きっと汚れに気づいたら、すぐに移動するだろう、と。
だが、彼女の行動は、私たちの予想とまったく違った。



















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