読者の皆様は、「人的資本経営」という言葉を耳にしたことがあるだろうか? 今年に入り、企業経営の中で、急速に飛び交うようになったフレーズだ。上場企業やグローバル企業では、この「人的資本経営」の考え方を経営の中心に据える動きが急速に加速。経営・組織コンサルティングを手掛ける筆者の経営するエッグフォワードにも、人的資本経営対応に関する相談が直近、急増している。
読者の皆様からすると、「人事の仕事でしょ」とか「 “社員を大切にしよう”でしょ?」と解釈する方もいらっしゃるかもれない。あるいはまさに対応していて苦労しているという方もいらっしゃるかもしれない。ただ、人的資本経営は昔から言われてきた「人を大切にしましょう」のような精神論とは根本的に異なっている。
多くの企業が実践に向けて模索、あるいは、迷走?をはじめているのはなぜなのか。ビジネスパーソンとして、時代の潮流を正しく見極めるためにも、人的資本経営の基本をまず押さえてみたい。
人的資本の情報開示が義務化
まず、日本において、ここまで、急速に「人的資本経営」が叫ばれている理由を説明したい。端的に言ってしまえば、いかにも日本らしいともいえるが、企業に対して人的資本情報を開示要請(義務化)する動きが進んだからだ。
「社内外に対する人的資本の情報開示のガイドライン」として国際標準規格のISO30414が制定。米国証券取引委員会(SEC)は2020年に情報開示を義務付けており、日本では2021年に東証がコーポレートガバナンス・コードを改定し、サステナビリティーに関する課題として、「人権の尊重」「従業員の健康・労働環境への配慮」「構成・適切な処遇」など人的資本に関する項目が盛り込まれ、今後開示が義務化される見通しだ。
筆者が代表を務めるエッグフォワードで上場企業の経営者・役員層を対象に直近実施した調査では、82.7%がSECによる人的資本に関する情報開示の義務付けを認知している結果だった。また、同調査では、約9割が「人的資本に関する情報開示は今後日本でも必要性が高まっていくと思う」と回答している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら