「人的資本経営」今さら聞けない基本中の基本 経営者はしっかり押さえておかないと後れを取る

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また、人生100年時代を見据えたキャリア形成のあり方として、リスキル(学び直し)ができることや、アルムナイ・ネットワークの構築など、より多面的な観点で人材に戦略的な投資を行い、経営戦略の実現に結び付けていくことが求められてきている。

とはいえ、こうした総論だけ聞いても、「総論賛成、各論反対」では何も進まない。人的資本経営は、まだまだ多くの企業で模索をしている段階であり、「そもそも何から手を付ければよいかわからない」「社内の理解や知見が足りない」といった声も多く聞かれる。しかし、さまざまな企業から相談を受けてきた立場からすると、取り組みが上手く進んでいなかった企業には共通の傾向が感じられるので、最後にご紹介したい。

まず、何でも右にならえで、あらゆることに総花的に取り組んでしまうパターン。本来は、会社が目指すパーパスやミッションは何か、そのうえで事業戦略を踏まえた、優先度をつけて設計をしないと、人的資本対応を行うことが目的化してしまう。目先の開示対応のみの対応に走りやすいのもその典型と言えるだろう。そうでないと、とても、企業のパーパスと、個々の自己実現の両立などなしえない。

モノ・カネ重視の経営を改める転機にも

加えて、最大の失敗パターンは、経営陣が一方的に人事へお題を丸投げしているケースだ。人がテーマなので、人事が一定の役割を担うことは間違いではない。ただ、これはあくまでも人事に閉じた話ではなく経営の話。経営が主体的に推進していくテーマであることを忘れてはいけない。

目先の働き方だけを改善して終わりではない。1人ひとりのキャリアにあった育成機会を提供したり、従業員エンゲージメントの測定・改善を行ったりといった個別の人事施策に加えて、事業戦略実現のための有効性の高い施策へと落とし込んでいくことが最も重要な観点だ。

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その意味で人的資本経営という新潮流は、財務情報(モノ・カネ)のマネジメントにウェイトを置きがちだった経営スタイルを改める転機でもある。

社会の多くの経営者が非財務情報(ヒト)を人事に丸投げするのではなく、ヒト・モノ・カネに正しく目を配っていくこと。それは、企業視点でのパーパスや事業成長をどのように実現するかと同時に、組織に従事する個々の自己実現をどのように両立していくのかというテーマとも言えるだろう。

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

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とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

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