「人的資本経営」今さら聞けない基本中の基本 経営者はしっかり押さえておかないと後れを取る

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実際に、上述の調査でも、経営者や経営に準じる人々に「人的資本の開示が必要になると思う理由」を聞いたところ、回答の1位が「有形資産から無形資産に移行しているから(68.1%)」。2位が「ESG投資の重要性が高まっているから(58.2%)」で、「経営戦略と人材戦略の連動が重要となるから(49.5%)」「企業の中核人材における多様性の確保が求められているから(35.2%)」と続く結果だった。

このような結果からわかるとおり、今本質的に求められているのは、単なる情報開示ではない。人的資本を重視した経営の実践だ。人的資本経営の定義を筆者徳谷なりに説明すると以下のようになる。

『人材こそが企業における価値創出の源泉(=資本)であると位置づけ、戦略的な「人への投資」によって人材価値を最大化させ、事業成長へとつなぎ、企業価値を高めていく経営』

要は、従来の経営においては、もっぱら財務上の観点からは、人=コストとして捉えられていた。人件費という言葉があるように、あくまで人は費用であり、少ないコストで効率の良い事業運営を実現することを良しとしてきたのが実態だった。

人の能力は数字に置き換えられるほど単純じゃない

しかし、人の能力は一概に、数字に置き換えられるほど単純ではなく、財務情報には見えてこないもの。むしろ、無限の可能性を秘めた人を資産として、最大の投資を行い、中長期においてサステナブルな経営を実現しようというのが、人的資本経営の基本的な考え方だ。

公開情報の例で言えば、例えば、オムロンは、「組織能力の転換を推進し、成長の持続性を高める」べく今後3年で従来比3倍となる資源を人材開発に投資、ジョブ型の人事制度も拡充させると発表。更に利益目標に加えて、ESG目標の達成度に応じて、業績連動での株式報酬を適応すると言う。

また、重ねて興味深いのは結果指標だ。「人的創造性」(=付加価値額(売上-変動費)を、総人件費で割った、人件費当たりの付加価値額)という人当たりの付加価値額の指標を定め、3年間で7%引き上げることを資本市場に宣言している。こういった例にみられるように、今後は、人による付加価値を高めていく経営を重視し、発信する取り組みがより一般化していくだろう。

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