とはいえ、読者の皆様の会社組織でも形式的な対応にとどまっていたり、とてもそんなきれいごとどころじゃないという会社組織もあるのではないだろうか。
正論で言えば、本来、人的資本経営においては企業の存在意義である、企業の「パーパス(purpose)」を頂点として、「経営戦略」から「事業戦略」、「人材戦略」までが一気通貫・連動していることが重要だと筆者徳谷は考えている。
まず企業として目指す姿を設定し、現実と比較してギャップを明らかにすること。そして、そのギャップを埋めるための「事業戦略」と連動させて、「人への投資」をしていかねばならない。社会の目まぐるしい環境スピードに対応していくには、社内にさまざまな強み・価値観を持つ多様な人材の能力が発揮されている状態が理想であり、だからこそ彼らへの投資(高い成果を出すための労働環境や、眠っている能力を引き出す育成機会の提供)も画一的ではなく個別性の高いものが求められる。
そのために、求められることの1つは、多様な個人のWILLやキャリア観を踏まえた、人材のポートフォリオ(構成バランス)や、機会提供だ。
個々人の可能性を発揮できなければ机上の空論
どれほど綺麗な制度を人事部門が創ったとしても、個々人が本来持っている可能性を発揮できなければ机上の空論になってしまう。
たとえば、大手グローバルメーカー等の具体例で言えば、個別性の高い育成機会という意味では、将来の経営幹部として期待される次世代リーダー候補には、本人の志向性も踏まえて、20代・30代のうちに抜擢し、現・経営陣と一緒に厳しいミッションに挑戦する機会を提供しているところも増えてきた。
このように、社員1人ひとりの中長期的なキャリアを見据え、それぞれの強みを伸ばす人材配置や業務機会を提供することが重要。同時に、現社員に対するアプローチだけでなく、育児・介護に従事する人やシニア、外国人など多様な属性の社員を積極的に迎えいれていくことの是非や、そのための仕組み創りも検討していく必要がある。
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