悲しみから気づいた新たな価値観
最近私は、また大きなネガティブな体験をしました。そのことが、「世の中の中心は愛だ」という思いを強めるきっかけとなり、人間はその愛を忘れがちで、何とかしなければいけないと考えるようにもなっています。
今年、第3子を出産しましたが、その子は、難病のために入院しています。私にとって本当に悲しい出来事です。
産後しばらくの間、病児と家族専用のホスピタリティハウスにお世話になっていたのですが、そこで働くスタッフの方々は、本当に優しくて、愛を感じました。私が困っていると、ハウスの中のルールを超えて、何ができるのかを一緒に考えてくださるのです。
そこは、私がこれまで過ごしてきた資本主義の世界とは、原理がまったく違う世界でした。資本主義は、等価交換が基本で、これを(提供)して対価を得る、あるいは逆に、この対価に対して、これだけのものを提供してもらう、という世界。交換はすぐに清算されて取引が完結し、効率性が重視されます。
ですが、ホスピタリティハウスで出会った方々は、自分がいかに困っている人の力になれるかという原理で動かれているように感じ、まさに愛が中心になっているのだと理解しました。
子どもは20時間以上の手術を受けましたが、一命を取りとめたのは担当してくださった医師や看護師の方々のご尽力があったからです。長時間休みもなく立ちっぱなしで仕事をし、しかも、対象となる赤ん坊は、死にかけているという極限状態。効率性など超えています。
このような経験を経て、個人的にも、他者との付き合い方が変化しました。特に、何の関係性もない人とのコミュニケーションを大事にするようになったのです。
以前の私は、自分でもそうとは知らず、効率性を重視していました。例えば買い物をするときも、レジの店員さんとは商品とお金の受け渡しをする間柄で、その行為を早く終わらせるという意識しかありませんでした。
でも、最近は、声をかけたりして、短時間の関係性ながらも、人間らしさを大事にするようになりました。
ジェイミーさんも、本の中で、コーヒーショップの店員さんと会話を交わした際のエピソードを紹介していますよね。2人の人間が心を通わせる瞬間が大好きだ、と。
現状では、資本主義と愛を一緒に考えるというのは違和感のあることだと思います。多くの人の理解を得るのは難しいでしょうし、愛を中心とした世界となるには、資本主義を超えた新しいイデオロギーが必要でしょう。
私が生きているうちに、そんな新しいイデオロギーが実現するのかどうかはわかりません。でも、そういった方向へ世界が向かっていくといいなと思いますし、経営者として、ビジネスを通して、愛というものをより強化していける会社でありたいと考えています。
私たちが生きていくうえで、1日の中に、自分の人生にとってどれだけ意味あることを見つけられるか、ということが大事だと思います。本書は、そのためにぴったりですし、起業家であるかどうかにかかわらず、より多くの方に読まれてほしい本だと思います。
(構成:泉美木蘭)
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