「自分たちは犠牲者」の声が忘れている危険な思想 韓国だけではない!なぜ悲劇の記憶を争うのか

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慰安婦を象徴する少女像は、なぜ世界各地に設置されたのでしょうか (写真:Yeongsik Im/PIXTA)
「自分たちは犠牲者なのだ」と主張する攻撃的な民族主義が、世界各地で歴史認識紛争を引き起こしている。韓国・西江大の林志弦(イム・ジヒョン)教授は、これを「犠牲者意識ナショナリズム」という新しい概念で説明する。ポーランド史研究者だった林教授は15年前、この概念について研究を始めた。韓国とポーランド、日本、ドイツ、イスラエルの自国中心的な民族主義を批判的に検証した著書『犠牲者意識ナショナリズム』の日本語版を刊行した林教授に、冷戦終結後の世界を揺るがす「記憶」について聞いた。

韓国人を加害者として描くことは歴史の歪曲なのか

澤田克己(以下、澤田):日系アメリカ人のヨーコ・カワシマ・ワトキンズさんの自伝的著書『竹林はるか遠く』を巡って2007年に米韓両国で起きた騒ぎが、「犠牲者意識ナショナリズム」という概念を考える契機になったそうですね。

犠牲者意識ナショナリズム――国境を超える「記憶」の戦争
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11歳で終戦を迎えた少女が朝鮮半島北部から日本へ引き揚げる逃避行を描いた作品で、レイプ被害にあった女性がいたなどと書かれています。

林志弦(以下、林):韓国人を邪悪な加害者、日本人を罪のない犠牲者として描いて歴史を歪曲していると騒ぎになった。ただ、民族で語るなら韓国人が犠牲者で日本人は加害者だと言えても、個人の具体的な行為では逆のことだってある。この本について、植民地支配という歴史的背景をきちんと書いていないと批判することはできても、嘘だと責めるのは行き過ぎだ。

この騒動を見ながら私は、ドイツとポーランド、イスラエルによる「記憶」を巡る争いを思い出した。そして「犠牲者意識ナショナリズム」という言葉を使ったコラムを韓国の英字紙に寄稿すると、多くの在米韓国人から激しく抗議された。過剰とも思えるその反応を見て、皆が目をそらしたがる真実が「犠牲者意識ナショナリズム」に込められていると考えた。

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