アップルが挑む"腕時計"にワクワクはあるか 4月発売に向けていよいよ詳細を発表へ

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とはいえ、その後の展開は予想が難しい。Apple Watchがまったくの期待外れで、初期に飛びつくアップル製品ファンからも見向きもされない製品である可能性もゼロではないからだ。

しかし、アップルのiPhoneユーザーは市場全体の平均価格に比べ、2倍の価格を許容できる優良顧客しかいない。これがシャオミやサムスンと大きく違うところだ。他社がうらやむような優良顧客を8億人も持っているような企業が、いまどき他にあるだろうか。

Android端末で勝負するメーカーと異なるのは、iPhoneを取り巻くエコシステム(アプリ、コミュニティ、コンテンツ、それに互換度の高いiPadの存在を含めてもいいかもしれない)に依存している顧客が、他の端末メーカーに流れる可能性がないことだ。

完成している強固なエコシステム

iPhoneは6世代目を迎えて完成度を高め、いよいよ世代を重ねてもイノベーションと言える要素は提供できなくなってきた(もちろん、それは他メーカーも同じではあるが)。しかし、iPhoneという製品が生み出す市場が成熟する以上に、iPhoneエコシステムが成熟することで顧客流出が極めて少ない仕組みが出来上がっている。

端末、サービス、コンテンツ、基本ソフトまで、すべてを1社で管理しているスマートフォンのシステムは他になく、なおさらにiPhone事業を確実なものにしている。一時的にiPhone 5cという製品も存在はしたが、プレミアム製品のみに回帰して成功した。

こうしたiPhoneエコシステムの成熟は、ハードウェア製品としてのiPhone事業を押し上げているだけではない。当初はハードウェアを販売するための仕掛けとして必要だったiTunesのストアサービスだが、今では収益源として毎年堅実な成長を遂げている。

すなわち、まずはハードウェア事業の強化という形で貢献し、その後、単独のビジネスとしても離陸できているということだ。アプリの売り上げやアプリ内課金、コンテンツ売り上げの3割を、アップルは手数料として徴収している。

将来、Apple Watchがアップルの収益に大きく貢献する日もくる可能性はある。しかし、まずはアップル最大の収益源であるiPhoneの価値を高め、アプリやサービスとデバイスの結合度合いを強めることをスタート地点に考えているのではないだろうか。iPhoneの価値が間接的にでも高まり、エコシステムが強化されれな、iOSの大きなコミュニティに対して少なからぬ影響を与えるだろう。しかし、それはまだ先の話だ。

Apple Watchは、「2015年、世界でもっともよく売れた腕時計」になるはずだ。腕時計は多品種で多様なプレーヤーが競争する世界。大手メーカーでも1シリーズあたりの出荷台数は知れたものである。たとえ、アップルの想定を大幅に下回るような出荷量だったとしても、年間1000万台以上は売れるだろう。同一モデルで年間1000万個も売れる腕時計など、世界中のどこにもない。少なくとも、腕時計業界を大きく揺さぶることは間違いない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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