数学嫌いに伝えたい「sin」「cos」が社会で役立つ訳 実生活のさまざまなところで使われている
巨大IT企業がリードするグローバル社会において、数学はその産業の基盤となり、いまや欠くことのできない教養となっています。
「育ってきた環境・文化・常識が違う人が世界中から集まる場においては、数字を根拠に物事の全体像を俯瞰して判断し、数字や数式を使って情報を正確かつ具体的に伝えなければ、話を真剣に聞いてもらうことはできない」と語るのが、東京大学、JAXA出身で数学オリンピック出場経験もある永野数学塾塾長の永野裕之氏です。
新著『教養としての「数学Ⅰ・A」』を上梓した永野氏が、今回は「三角比」を学ぶ意味について解説します。
紀元前6世紀にピラミッドの高さを測れた理由
「sin(サイン)やcos(コサイン)なんて社会で役に立たない」とかつてうそぶいた政治家もいましたが、古代から人間は三角比の有用性に気づき、さまざまに活用してきました。まずは、簡単に三角比の歴史的経緯から解説しておきましょう。
古代ギリシャの時代、ピタゴラスよりもさらに100年ほど前、ソクラテス以前の紀元前6世紀にタレスという哲学者がいました。彼はいわゆるギリシャ七賢人の1人で、自然哲学の始祖ともいわれている人物です。
タレスが取り組んでいたのは、今でいう論証数学です。基本的な事柄を証明したら、その証明された事実の上に新しい証明を積み重ねていく。こうした考え方は、タレスから始まったといわれています。
あるとき、このタレスがエジプトを訪れた際、ピラミッドを見てその高さを測ってみせるといい出しました。ほかの人はそんなことは無理だと思っていたわけですが、タレスはどうやってピラミッドの高さを測ったのでしょうか。
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