乃木坂46「過渡期を迎えた清楚アイドル」の現在地 乃木坂らしさとは何か?という議論が渦巻く

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3月にリリースされた新曲『Actually...』を作曲したのは、乃木坂46に提供するのは初めてのNAMITOという方で、曲は打ち込み主体のクラブ志向の高いダンスナンバー。歌詞にも冒頭から英語のナレーションが挿入されたりと、これまでの楽曲とは異なるテイストに満ちています。

しかも、楽曲の“顔”となるセンターポジションには、加入間もない5期生の中西アルノを大抜擢。馴染みのない曲調に、馴染みのないメンバーが中心でいることに、乃木坂ファンの多くが違和感を抱いたのは想像に難くありません。

また筆者の個人的感想ではありますが、中西アルノのビジュアルイメージが、これまでのメンバーにはないクールさが強かったことも大きいのではないでしょうか。歌詞も、「自己肯定感を高めろ」という類ではあるものの、これまで以上に詩的な表現が多く散りばめられているという印象です。

そして、この『Actually...』が、配信番組「乃木坂46時間TV」内で初めて披露された直後に報じられた、中西アルノと、この時点では未公表だった新メンバー=岡本姫奈が「グループの活動規約に違反していた」(運営側のコメント)ことによる、活動自粛の発表。

4月27日に東京国際フォーラムで開催された「5期生 第2回お見立て会」と題したイベントで中西、岡本ともに騒動への謝罪の言葉を述べた上で復帰を果たしましたが、このイベントはネット配信などが行われず、ひっそりと開催された印象です。

過渡期にさしかかっている乃木坂46

結成から10年余を経て、グループから卒業するメンバーが相次いでいる乃木坂46。2021年は1年間で8人、今年に入ってからも既に3人がグループを離れ、当初34人(本格活動前辞退者は除く)いたオリジナルメンバー=1期生は、いまや4人、2013年加入の2期生に至っては僅か2人にまで減少してしまっています。メンバーの大半が3、4期生となり、そこへ5期生11人が加入するという、正に世代交代の真っ只中、いわば過渡期に差し掛かっています。

活動期間が長くなれば、どんなグループでも一定の「イメージ」が定着してしまうのは当然のこと。

その中で、10年目のBirthday Liveを迎えるにあたって、乃木坂新時代をアピールしようとした運営側の思惑は理解できるものの、そこに最悪のタイミングでスキャンダルが重なったことで、多くのファンの持つ、「清楚」「純粋」「健気」というイメージと真逆の「黒さ」「闇」がチラリと見えたことに激しい反発があったのが、今回の事態でしょう。

“乃木坂らしさ”は、メンバーが入れ替われば少しずつ違いが生じてくるものなのは致し方ないことだと思います。それでも、例えて言えば3年でメンバーが総入れ替えしても「伝統」や「校風」を受け継ぎ「強豪」であり続ける高校野球のチームのようになる。それがいまや大看板となってしまった「乃木坂46」の抱える宿命なのかも……。筆者はそんなふうに感じました。

小林 偉 メディア研究家

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こばやし つよし / Tsuyoshi Kobayashi

メディア研究家、放送作家、日本大学芸術学部講師。東京・両国生まれ。日本大学藝術学部放送学科卒業後、広告代理店、出版社を経て、放送作家に転身(日本脚本家連盟所属)。クイズ番組を振り出しに、スポーツ、紀行、トーク、音楽、ドキュメンタリーなど、様々なジャンルのテレビ/ラジオ/配信番組などの構成に携わる。また、ドラマ研究家としても活動し、2014年にはその熱が高じて初のドラマ原案・脚本構成も手掛ける。

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