宋美玄さん「一度は使って」月経カップを勧める訳 女性特有の悩みを解決「フェムテック」とは?

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――月経カップも月経用吸水ショーツも繰り返し使える点がいいですね。ただフェムテックと同時に「サスティナビリティ(持続可能性)」や「SDGs(持続可能な開発目標)」が注目され、月経用吸水ショーツのPRにおいて「生理用ナプキンの廃棄量は6トン」「環境にいい」などとアピールされたことで女性からの反発が生まれ、その気持ちもわかりました。

 そうですね。使い捨てナプキンの登場によって、女性が月経の大変さから解放されたことは間違いありませんから。月経の不自由さに苦しむ女性たちに、清潔で安価なナプキンを開発して売った男性を描いたインド映画『パッドマン』もありました。

忙しかったり、疲れていたりすると、吸水ショーツや布ナプキンを手洗いしたり、清潔に保つのは大変だと感じる女性も多いでしょう。経済的な理由からナプキンなどが購入できない”生理の貧困“を解消しようという動きもあります。が、女性の自己決定権がサスティナビリティよりも優先されるべきだと思います。いくら環境にやさしくても、誰もが月経用吸水ショーツや月経カップを使うべきだということではないんです。

――同感です。それに初潮を迎えたばかりの女性たちでは、それらのアイテムを使うこと自体も、管理や手入れもなかなか難しいのではないでしょうか。

 思春期の女性たちの場合は、まず自分の月経に慣れ、自分の体をよく知り、うまく付き合えるようになることから始めたほうがいいと思います。最初はそれだけで精一杯だと思うので、使い捨てナプキンが最適ではないでしょうか。

性交渉の経験がないと月経カップを入れるのはなかなか難しいでしょうし、月経用吸水ショーツや月経カップ、布ナプキンなどを洗うのも大変でしょう。

――フェムテックって、女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決する商品やサービスですよね。それなのに女性がフェムテックによって大変になってしまったら逆行しているような気がします。

 それぞれの人にとって快適なものを選ぶというのが一番でしょう。昨今のフェムテックブームには、やはり「ビジネスとして盛り上げていきたい」という思惑もあるわけです。

効果のよくわからないサプリメント、腟の中に特別必要のないデバイスを入れる「腟トレ」、本当は中にオイルを入れないほうがいい腟の「オイルマッサージ」など、根拠のないものをビジネスとして推奨する人もいます。わざわざ不要かつ大変なことをおすすめするわけですから、本当にフェムテックから逆行していますよね。

フェムテックとどう付き合えばいいか

――では、フェムテックとはどう付き合っていくのがいいでしょうか?

 よく「海外ではフェムテックが盛んだ」と言いますが、日本と違って医療費が非常に高く、予約してすぐに診療を受けられない国が多いからこそ、自分で予防・改善するしかないという面があります。でも日本の医療はフリーアクセスで、国民であれば誰でも保険診療を受けられますよね。だからこそ、フェムテックと医療はしっかり分けて考えたほうがいいと私は考えます。

フェムテックはあくまでも「女性が快適に過ごすため」「必要なときには医療につながるため」に利用するのがおすすめです。

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