新宿で50年続く「社交ダンス教室」が見てきた変化 ホストや地下アイドル、子どもまで生徒も多彩

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キッズダンスも教えている(写真提供:西武新宿ダンス教室)

橋本「教室はそれほど混んでいないし、もちろん私たちも生徒さんもマスクや消毒をしています。けれど、生徒さんの家族などからしたら行ってほしくない。(ダンス教室だから、ではなく)『歌舞伎町だから近づかないほうがいい』と周りの人に言われた生徒さんもいるそうです。うちから感染者は出ていないのですが、来なくなってしまった方も、辞めてしまった方もいました」

進化し続ける教室

教室は助成金の支給もあって、生徒が減っても何とか継続できているという。感染者数が増えたり減ったり、緊急事態宣言やまん防が発令されたり解除になったり、コロナが今後どうなるか見通しづらいが、橋本さんも比美野さんも前向きに、収束後のことを見据えている。

ひろびろとした教室(写真:尾形文繁)

比美野「自粛のせいで、みなさん運動不足になっている気がすごくします。フィットネスもとてもいいですが、同じ動きをするのに飽きてしまった方は、ダンスはいかがでしょう? 振り付けを覚えて、音に合わせて踊るのは楽しいと思いますよ。もちろん、社交ダンスはここのメインだし、絶対に無くしませんが、何でもこたえられる教室にもなっていきたいですね」

かつては社交ダンス専門だったが、教えているダンスのジャンルは現在、ヒップホップやジャズダンスやK-POPなど幅広い。ヨガやバレエ、エアロビクスやバーレスクを教えることも。筋トレやストレッチやポージングの指導もOK。結婚式や忘年会の出し物の「余興ダンス」や、動画投稿サイトの「踊ってみた」のために習いに来る人もいるなど、時代と共に広がる表現の幅に合わせ、教室も進化し続けているのだ。

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筆者もあごやベルトに乗った肉を何とかするため、取材であることを忘れて通いたくなっていた。歌舞伎町の社交ダンス教室で解消する運動不足とは、何ともぜいたくではないか。最後に、50周年の次の目標を尋ねると、橋本さんは笑顔で即答した。

「私が踊れる限り、ずっと継続していきます。一番落ち着ける場所、歌舞伎町で」

50年前に教室を始めたその日も、きっと同じような、まぶしい笑顔を振りまいていたのだろう。「踊りませんか?」そう誘う声が、聞こえてきた気がした。

肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

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こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京都生まれ。ルポルタージュや報道系の記事を主に手掛ける。著書に『究極の愛について語るときに僕たちの語ること』(青月社)、『フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。』(実務教育出版)。東京・新宿ゴールデン街の文壇バー「月に吠える」のオーナーでもある。ライフワークは愛の研究。

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