プロは「自分の市場価値」をどう値付けているのか 個人と企業が対等な時代の「働き方&稼ぎ方」

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

篠田:本には「現在の齋藤太郎のフィーは当初の20〜30倍になった」とありました。そこまで価値を引き上げることができたのはなぜでしょう?

齋藤:そもそも当時は「自分の対価としてフィーを設定する」考え方自体が日本企業にはなかったんですよ。とくに日本の広告業界は世界的に見てめちゃくちゃ遅れていて、こういう概念が芽生えたのはここ20年のことだと思います。

篠田:「儲かる構造があるから個人の知見はタダでいいというのが、かつての広告業界の建付けだった」と本にも書いていましたね。

そこに変化が起き、同時に個人が「自分の市場価格はいくらか」を意識するようになった流れがあったことで、「dof(編注:齋藤氏の会社)のフィーはこの額です」という考え方を相手も理解しやすくなったのでしょうね。

齋藤太郎(さいとう たろう)/コミュニケーション・デザイナー/クリエイティブディレクター。慶應義塾大学SFC卒。電通入社後、10年の勤務を経て、2005年に「文化と価値の創造」を生業とする会社dofを設立。企業スローガンは「なんとかする会社。」。ナショナルクライアントからスタートアップ企業まで、経営戦略、事業戦略、製品・サービス開発、マーケティング戦略立案、メディアプランニング、クリエイティブの最終アウトプットに至るまで、川上から川下まで「課題解決」を主眼とした提案を得意とする。サントリー「角ハイボール」のブランディングには立ち上げから携わり現在15年目を迎える(撮影:梅谷秀司)

齋藤:もともとdofという会社自体、「クリエイティブディレクターの大島(征夫)さんにきちんとフィーを支払う仕組みを作りたい」という思いがきっかけとなり、「日本も手数料ではなく、欧米のようにフィーで仕事を受けることが主流となる時代が来るのでは」という仮説を基にスタートしています。

欧米とは違い、日本は商習慣としてアイデアなど無形のものに対して対価を払うという考え方がほとんどなかった中で、きちんとフィーを獲得するというビジネスを築いてきた自負はありますね。

篠田:なるほど。自分の値付けも含めての仕事術であり解決術だから、価格のことを語らずして、この本を出した意図が成立しないのですね。

齋藤:そこに興味持つ人ってほとんどいないですよ(笑)。でも、確かにdofや僕の仕事について語るとき、フィーの話は避けて通れなかったところではありました。

会社と個人はフェアであるべき

齋藤:僕は会社と個人はフェアでなければいけないと思っています。「価値を出した人は正当な評価をされるべきだ」という思いが強いから、うちの社員の給料はいいんです。それはプレッシャーでもあって、大手代理店のような会社の看板がない中で価値を出さなければいけないのはしんどくもある。ただ、フェアではあるわけです。

一方、世の中を見渡すと、日本企業はアンフェアなことが多いですよね。会社が暴利を搾取して「割り勘勝ち」しているケースもあれば、グータラ社員が会社にぶら下がって逆の「割り勘勝ち」しているケースもある。

次ページ共同体に属することの価値が下がった
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事