プロは「自分の市場価値」をどう値付けているのか 個人と企業が対等な時代の「働き方&稼ぎ方」
齋藤:僕は初期の頃、「僕の価格はそちらで決めてください」と伝えていました。大企業から独立したクリエイターにも、最初はそうすることを勧めていますね。
篠田:ただ、クライアントによって相場観は全然違いますよね。私は個人で講演をお引き受けするようになって、価格の幅に驚いたんですよ。価格表がある会社もあれば、大手企業であっても「知り合い価格で」と言われることもある。
齋藤:そこは個人と法人でも考え方が変わると思います。法人の場合は僕1人で引き受けるのではなく、社員も含めたチームで対応する以上、ある程度のバジェットは必要になります。こちらの提供できる人的リソースが有限である以上、ご満足いただけるサービスを提供するためには仕方がないことだと考えています。
恋人の関係ではなく結婚の関係を目指す
齋藤:そのうえでうちの会社の場合、長く続くロングテール型の事業がいちばんいいと思っているので、「ほどよく安い」「お得かも」と思っていただけるのがベストだと考えています。Netflixがサブスクで視聴者に対してコンテンツを提供している中で、「こういうドラマがウケるのか」とデータを蓄積するように、われわれも同じクライアントと長くお仕事をすることで提供できるソリューションの精度やクオリティーを高めることができる。信頼関係が構築できている既存クライアントがいちばん重要ですから、次から次へとお付き合いをする「恋人の関係」ではなく「結婚の関係」を目指そう、という話はよくしますね。
篠田:なるほど。長いお付き合いの中で価値を感じていただけたら、関係性が継続するわけですからね。
齋藤:もっと高く受注しようと思えばできるかもしれません。ただ、価格を上げると、期待値だけが上がっていっちゃうじゃないですか。「初めまして」の会社の案件を獲得して、高いフィーを請求して引き受けるのはエネルギーがいるし、派手でわかりやすい提案ばかりを繰り返すような状況にもなりがちです。