リニア新幹線と「野生生物」の何とも気になる関係 JR東海と静岡県の「対話」、沢枯れめぐる議論

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沢の中にいる野生の生きものに開発はどのような影響を与えるか(写真:島田知彦・愛知教育大学准教授提供)
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リニア中央新幹線静岡工区に棲むサンショウウオは工事に起因する沢枯れを生き延びることができるのか。
大井川の水量減少や建設残土問題に加えて南アルプスの自然生態系への影響をめぐる静岡県とJR東海間の議論が本格化している。先月開かれた会合では、JR東海が新たな提案を示し、近く行う調査で一部の懸念は払拭できると自信を示した。トンネル工事が引き起こす地下水位低下が高山植物や渓流源流部の生物に与える悪影響をどこまで回避できるのか。県が着工を許可するかどうかの前提となる検討は、大詰めを迎える。
水の中で2年ほど過ごすハコネサンショウウオの幼生。2019年に岐阜県内で撮影された。静岡工区に多く生息している(写真:島田知彦准教授提供)

ハコネサンショウウオの「生き死に」が俎上に

3月24日、静岡県中央新幹線環境保全連絡会議の第9回生物多様性部会専門部会が開かれた。同部会は県側の専門家とJR東海が同じテーブルについて検討しようと2020年12月にスタートし、2021年10月から5カ月ぶりの開催だった。

新たに専門部会委員になり、会合に加わった愛知教育大学の島田知彦准教授(42歳)の発言を聞きながら、私は「へえっ」と思った。サンショウウオやカエルなど両生類の研究者である島田准教授はこう話した。「前回の議事録を読むと、ハコネサンショウウオがひとつのキー(鍵)になっている。ハコネサンショウウオは山地帯に多く、全国各地で食用にされてきた。しかし、いる場所は減っている」。

私は昨年の前回会合を傍聴できなかった。資料は読んだつもりだった。しかし、「ハコネサンショウウオが鍵だったっけ?」とピンとこなかった。改めて議事録を読むと、JR東海が「自然環境の保全に向けた取り組み」を説明。生態系への影響が生じる可能性がある場合の対策として、ヤマトイワナとハコネサンショウウオを例に挙げ、「移植」を提案している。

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