リニア新幹線と「野生生物」の何とも気になる関係 JR東海と静岡県の「対話」、沢枯れめぐる議論

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「非常に見つけにくい。カエルなんかと違って鳴きませんし。なかなか研究が難しい」。島田准教授によると、生息数や生活実態がよくわかっていない。山地にはたくさんいて、日本各地で捕って食べていたという。

「夏場に渓流のちょっとこう、水が落ちているような、小さな滝のようなところに竹で編んだかごをしかけておくと、上から流れてきたハコネサンショウウオが落ちて、ぎっしり捕れたようです」「愛知県の足助という所では、住民が3種類のサンショウウオを識別していて、そのうち、アンコ、キアンコと呼んでいたのがハコネサンショウウオ」

どうやって食べたのだろうか。「幼生は生でそのまま、ツルンと呑んだ。成体の場合は、棒に刺して軒下に下げておくと、薬売りの人が買っていったと聞きました」「胃に良いという話で、胃の弱い人が幼生を呑みに来たそうです。湯治場でもある足助には、名古屋あたりのお金持ちが芸者さんたちを連れてきて、一緒に呑んだとか」。薬効があるということらしい。

水がなくなればいなくなる

現在、ハコネサンショウウオは愛知県では準絶滅危惧種。捕獲などの規制はないが、食べたり飲んだりはみられなくなったという。

島田准教授の話を聞きながら、私は野生の生きものを食するということを考えた。まず、2012年に環境省が絶滅種に指定した二ホンカワウソ。かつては身近に見られた。カワウソ研究の第一人者、故安藤元一さんの著書によると、江戸時代には獣肉を扱う食肉流通網があり、カワウソの肉も食べられていたという。また、現在は環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に指定されているニホンウナギについては、「ちょっと前まで川にうじゃうじゃいた」という話を農家などからよく聞いた。

それで、ハコネサンショウウオの生息数は減っているのだろうか。データがないので、以前と比べた増減について明確なことは言えないそうだ。「おそらくかなり数は減っている。わりとよくいろんな人が言うのは、沢の水が枯れていなくなったと。沢の水の減少には敏感で、水がなくなればいなくなる」。

「産卵地は、岩の割れ目の奥に水が湧いているようなところで、ハコネサンショウウオは体が細くて平べったいので、1センチ四方もあれば岩盤の奥に入っていける。そこにたくさんの個体が集まって卵を産んでいるらしい」。もっとも、岩の割れ目から卵が流れ出してきたのを見つけた記録はあるが、産卵地そのものについてはよくわかっていないという。

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