リニア新幹線と「野生生物」の何とも気になる関係 JR東海と静岡県の「対話」、沢枯れめぐる議論

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ハコネサンショウウオの成体。2021年、長野県内で捕獲された(写真:島田知彦准教授提供)
こんな沢にハコネサンショウウオ類が生息していた。学生時代に島田さんが通った京都府内の沢(写真:島田知彦准教授提供)

沢の水の減少に敏感。岩盤の奥に入り、水が湧いている場所で産卵する。そんなハコネサンショウウオへの影響を減らす策はあるのだろうか。

「近いうちに現場を見て提案したい」。専門部会委員に就任したばかりの島田准教授の会合での発言に、私は「秘策」を期待した。しかし、改めて聞いてみると、「沢の水が減った場合にすぐわかるよう、厳密にモニタリングする方法を提案できたら、と思う。影響をどのように下げるか、ちょっとそれについては難しい」と話した。

JR東海が示した移植案は「無意味」

では、昨年10月の会合で、JR東海が示した移植案はどうなのか。

「移植先がサンショウウオのいない場所に放すのか、すでにサンショウウオがいる場所に放すのか。いない場所の場合、繁殖場がなかったり、生息に適していなかったりということになると、そこに放した個体はおそらく生きていけないでしょう。すでにいる場合、そこに過剰に個体を放したところで、エサ不足だとかがあり、その環境にいられる上限の数しか最終的には残らない。産卵地とか生息環境が減るんだったら、移植をしても意味がない」

板井隆彦・生物多様性部会専門部会長もJR東海が示した移植案を厳しく批判してきた。その論点は、1つには「移植するといっても、どこにするのか。遺伝的なかく乱を防ぐにはできるだけ近い場所が好ましいが、その沢や川は水が減らないのか」。2つ目は、例えばハコネサンショウウオの場合、繁殖も含めた生活サイクル全般を考えての保全対策なしに、沢にいるものを捕まえて別の沢に移す、といった行為はとりあえず何かしましたよというパフォーマンスにすぎない、ということだった。

島田准教授も「移植は意味がないと思います」と結論づけた。

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