リニア新幹線と「野生生物」の何とも気になる関係 JR東海と静岡県の「対話」、沢枯れめぐる議論

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静岡工区は標高3000メートル級の山々が連なる南アルプスに沿ってくさび型に突き出した部分にある。静岡県版レッドデータブックである「まもりたい静岡県の野生生物2019」によると、ハコネサンショウウオの生息域はこの静岡工区に重なる。

3月24日の会合の焦点は、JR東海が「沢の流量の減少を回避、低減する方法を示せるか」にあった。「悪影響の回避、低減策を十分に検討しないまま、移植という代償措置に言及している」という県の専門部会委員の批判に対し、JR東海は沢ごとに「沢カルテ」を作成してモニタリングを実施し、沢の流量の減少傾向がみられた場合には、トンネル掘削時の薬液注入を強化してトンネル内への水の噴き出しを抑える方針を新たに示した。

リニア中央新幹線東京~名古屋間の建設事業についての環境影響評価(環境アセス)手続きは2014年8月に終了した。しかし、トンネル掘削20年後に最大で300mも地下水位が低下するとの予測は、2020年7月にJR東海が国の有識者会議に提出した資料により、初めて明らかになった。

リニア中央新幹線静岡工区の位置(静岡県資料から)
静岡工区の沢は、ハコネサンショウウオの生息スポットとなっているらしい(まもりたい静岡県の野生生物2019<動物編>から)

全国各地でハコネサンショウウオが食べられていた理由

会合での島田准教授の発言には、はっとさせられた点がもうひとつあった。「ハコネサンショウウオは静岡県の絶滅危惧II類だが環境省のレッドリストには記載がなく希少種扱いをされていない。ランクの高い希少種ではないけれども、そういう視点とは違った重要性がある」と言うのだ。どういうことか。研究室を訪ねた。

『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』(関慎太郎著、緑書房)によると、日本固有種であるハコネサンショウウオは本州の茨城~新潟~和歌山~山口県に囲まれた地域に分布する。しかし、環境省の調査などで、最近の増減傾向などの報告を見たことがない。

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