静岡リニア、県が黙認する東電「ダム取水」の謎 ダムから大井川の放流増量で解決するはずだが

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10月7日、菅首相批判が飛び出した川勝知事の記者会見(筆者撮影)

9月25日の県議会代表質問で川勝平太静岡県知事は「(リニア問題で)広く国論を巻き起こす」と宣言、10月7日の記者会見ではリニア関連で日本学術会議問題に触れ、「菅義偉という人物の教養レベルが露見した。学問立国に泥を塗るようなこと」などと厳しく批判した。だが、知事の県民に対する責務は高い教養レベルではなく、まっとうな解決へ導く政治力である。

JR東海がトンネル掘削で大井川の流量が「毎秒2立方メートル減少する」と予測したのに対して、2014年春、知事は「トンネル湧水の全量を戻せ」という意見を環境影響評価手続きに記した。

2018年10月、JR東海は「トンネル湧水の全量を戻す」としたが、1年近くたってから、先進坑が開通するまで、山梨県側に10カ月間毎秒0.08立方メートル(平均)、長野県側に7カ月間毎秒0.004立方メートル(同)流出すると発表、工事期間中は「全量戻しができない」ことを認めた。

田代ダムの放流条件変更が解決の近道

これに対して、知事は「水1滴たりとも県外流出は許可できない」とはねつけ、議論が続いている。

2019年8月20日、静岡県リニア地質構造・水資源専門部会が開かれ、委員の一人が現実的な解決策として、東京電力の田代ダムから富士川系の早川へ分岐して山梨県側に流れている水量の一部を大井川に戻せないのか、という意見を出した。JR東海は「取水の権利を有する東電に、当社から要請するのは難しい」と回答している。

8月29日大井川流域の利水団体による意見交換会でも、染谷絹代・島田市長が田代ダム問題を取り上げた。さらに、9月12日専門部会合同会議で再び、田代ダムが議題となったが、いまのところ、JR東海へ要請する筋合いのものではないとの見解で一致している。

田代ダムは1928年建設された大井川で最も古い発電所用のダム。1955年、従来の毎秒2.92立方メートルから4.99立方メートルに取水が増量されると、川枯れ問題の象徴となり、流域住民の「水返せ」運動が始まった。

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