コロナ禍で「棚ぼたイノベーター」となったZoom 「イノベーションは技術革新ではない」意外な訳

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しかし、Zoomが人々の生活や仕事のやり方を変えた製品・サービスであることは間違いない。どうやらイノベーティブな発明であることと、イノベーションであることとは、必ずしも結びつかないということが言えそうだ。

実は後発企業だったメルカリ

仕事の都合やライフステージの展開に合わせて、数年スパンで引っ越しを繰り返す人も多い。そして驚くのが引っ越し荷物の少なさで、乗用車1台分ほどの荷物で済んでしまうという。なぜ荷物が少ないかというと、大きな家電などは中古で売ったり、あるいは必要なときに中古で買ったりというライフスタイルが浸透しているためである。メルカリは、そういったライフスタイルをつくり出し、支えてきたサービスである。

創業5年でユニコーン企業から上場を果たした、日本有数のスタートアップであるメルカリを知らない人はいないだろう。以前から世の中にある、中古品の市場=フリーマーケットをオンラインで実現したサービスであるが、その価値は「買う」という行為ではなく、「売る」という行為にあると考えている。

モノを買うときにインターネットで比較する習慣は一般的で、どの製品がいちばんいいのかと口コミを調べたり、どこが安いのかを探したりすることは以前から行われていた。最近では、何かを買うときに、それがいくらで売れるのかを調べ、逆算してコストパフォーマンスを想定するようになっているという。

これはリセールバリューを意識した購買行動と言われ、車や不動産など資産性の高いモノでは昔からある概念であるが、家電や衣類、ひいては不用品だと思われるラップやトイレットペーパーの芯にまで拡張されたのは、メルカリが実現したモノの流動性の影響のためだろう。誰もが日常的に中古品を買い、中古品を売るというライフスタイルを世の中にもたらしたという点で、メルカリはイノベーションにほかならない。

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