コロナ禍で「棚ぼたイノベーター」となったZoom 「イノベーションは技術革新ではない」意外な訳

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使用前は「オンラインでコミュニケーションなんて無理」と考えていた人が多かったはずだ。しかし、そのような人たちも実際に使い慣れてくるとコミュニケーション上の工夫をするようになり、オンラインでもコミュニケーションはできると感じ、オンラインミーティングは当たり前に変化した。

ビジネスだけの使用にとどまらず、大学の講義やオンラインでの講演なども当たり前となり、オンライン飲み会などにまで使用する場所が広がるとZoomは日常ツールに昇華した。

Zoomの普及は壮大な社会実験だった

製品・サービスを消費者や企業の日々の活動や行動の中に浸透させることを行動変容と呼ぶが、Zoomが達成したことはまさにこれであった。

内田和成(うちだ かずなり)/東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。2006年には「世界の有力コンサルタント25人」(アメリカ『コンサルティング・マガジン』)に選出された。2006年より2022年まで早稲田大学教授。著書に『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』(以上、東洋経済新報社)などが多数。2022年4月19日にトークイベントを予定している。 詳細はこちら(写真:筆者提供)

このようにイノベーションとは技術革新だけに頼るのではなく、人々を取り巻く環境の変化や商品やサービスを利用する人の心理変化が、成功させる要素として必要なことが見えてくる。科学の世界では、ある結果を導き出した最も影響のある変数を調べるために、それ以外の変数を固定して、ある変数がどれだけ結果に効いているかを確かめることが一般的だ。

しかし、社会科学の世界ではそれは難しいとされている。歴史にif(もし)はないからである。

それに対して、今回のZoomの普及はまさにその変数を確かめることのできた社会科学の実証実験であったと捉えると面白い。

Zoomという価値とそれを支える基盤技術はコロナ前から存在していた。つまり、価値や技術は変わることなく、固定されたまま、Zoomは普及したことになる。では何が普及させたのか。

それは移動規制やステイホームという社会構造の変化であり、オンラインが当たり前となった心理変化である。これこそイノベーションという結果に最も効果のある変化の推進力なのだ。

内田 和成 コンサルタント

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うちだ かずなり / Kazunari Uchida

東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。2006年には「世界の有力コンサルタント25人」(アメリカ『コンサルティング・マガジン』)に選出された。2006年より2022年まで早稲田大学教授。著書に『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』(以上、東洋経済新報社)などが多数。

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