コロナ禍で「棚ぼたイノベーター」となったZoom 「イノベーションは技術革新ではない」意外な訳

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そこで、2年半ほど前に早稲田大学ビジネススクールの内田ゼミの卒業生たちとイノベーション研究会を立ち上げ、調査・研究・議論を進めてきた。その結果、面白いことが判明した。

世の中に存在しなかった画期的な発明やサービスは、企業におけるイノベーションの必要条件ではないということである。それよりも新しい製品・サービスを消費者や企業の日々の活動や行動の中に浸透させることこそがイノベーションの本質である。

これを行動変容と呼ぶが、これこそが企業がイノベーションを起こすためのカギとなる。

画期的な乗り物セグウェイは世紀の大失敗

イノベーティブ(革新的)な発明と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。私が思い浮かべるものの1つにセグウェイがある。

ご存じでない方もいるかもしれないが、セグウェイは2000年初頭に登場した1人乗りの乗り物である。左右2つのタイヤに挟まれたボードに乗り、身体の傾きに反応して動き出す。今までにないコンセプトの乗り物で、はじめて私がそれを見たときは、「次世代の乗り物だ」と感心した。

スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツも絶賛したと言われており、当時の人々には間違いなくセンセーショナルに映ったものだろう。そんなイノベーティブな発明と注目されたセグウェイは、2020年に生産終了を発表した。華々しく登場したセグウェイはひっそりと消えていくことになったのだが、その理由は何か。

1つは、交通ルールの壁だ。画期的であるがゆえに、既存のルールには適合しなかったことが、普及を妨げたと推察する。

もう1つは、価格の壁も大きかったのではないか。100万円近くするセグウェイは、趣味としてはハードルが高いし、それだけ払うのであれば公道を走行でき、荷物も乗せられる自動車を選ぶだろう。後づけで理由を探せばさまざまあげられるのだが、結果としてセグウェイは世紀の大失敗として人々の記憶に残ることとなった。

セグウェイのプレジデントのジュディ・ツァイは声明で、「21世紀初頭を代表するイノベーションであるセグウェイが生産を終えることは、多くの人々を落胆させるかもしれないが、これまで当社をサポートしてくれた人々に感謝したい。セグウェイのブランドが人々の暮らしにインパクトをもたらしたことを誇りに思う」と述べたそうだ。

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