入院時の「外出できない」が原点
――どんなことがきっかけで、研究の道を志したのでしょうか。
高校生だった2001~2002年頃、先天性の心臓病が悪化して入院することになったんです。とてもつらく大変だったけど、入院生活自体は上げ膳据え膳で楽だなと思いました。
ただ、部屋の外に出られないことが苦痛で……。同室の人たちも子どものイベントやお祭りに参加できないことを「そこだけはつらいね」と話していたんですね。
当時、音声と映像はやり取りできました。音声はマイクというインプット(入力装置)とスピーカーというアウトプット(出力装置)があり、映像はカメラとディスプレイがあったわけです。
でも、体の動きに関しては当時、ジェスチャー入力もジェスチャー出力もどちらもなかった。外部とインタラクション(相互に作用)できる機械が欲しいなと思って探したけれど、売ってない。だったら、自分が研究者になって、作って、企業と連携するか起業するかして、社会に広めていくしかないと思って、研究者になろうと進路を決めました。
――世に知られるきっかけとなったポゼストハンド。「操られる手」という意味を持つこの装置は、コンピューターからの信号によって人間の手を動かすことができます。この発想にどうやって行き着いたのでしょうか。
ジェスチャー入力に関しては修士課程の頃から研究を始めました。でも、ジェスチャー出力をコンピューターから表現する分野は未開拓で、本当に研究者がいなかった。
それには理由があります。回路設計やプログラミング、機械学習など複合的な知識が必要なので、作るのが大変で、ややこしいんですね。だから、手掛ける人がいなかったんだと思います。
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