「他人と体をシェア」36歳早大准教授の凄い研究 沖縄でスキー、シベリアでビーチを楽しむ未来

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

琉球大で学んだ基礎を基に、東大の博士課程で、来る日も来る日も研究にのめり込んで作ったのが「ポゼストハンド」でした。

ポゼストハンドを装着して、手指を動作させている様子(H2L提供)

電極が付いた2つのバンドを腕に巻き付け、電極から電気刺激を与えることで前腕の筋肉を収縮させ、手指の動きを制御する仕組みです。

――2012年にはベンチャー企業「H2L」を立ち上げました。そして、「アンリミテッドハンド」「ファーストVR」など次々と製品を世に送り出しています。それぞれ、どんな装置なんでしょうか。

まず、脳の仕組みから考えましょう。脳は電気信号を出して筋肉を制御しています。その電気信号を増幅させて、脳が筋肉にどういう動きをさせようとしているか、推定するのが「筋電」という技術なんですね。

その筋電技術を使って製品を製作しようと考えました。それが「アンリミテッドハンド」です。ポゼストハンドはアウトプット機能だけでしたが、アンリミテッドハンドはインプット機能も入れようと考えました。

産業レベルに持っていけなかった

でも、テストを繰り返して研究レベルではOKが出たんですが、機能的にどうしても産業レベルに持っていくことができなかった。

アンリミテッドハンドはユーザーの手の動きをブルートゥース経由でゲームシステムに伝え、ゲームの中の物体の触感をユーザーにフィードバックする(H2L提供)

理由はノイズです。

スマートフォンやパソコンが近くにあると、そこから発している電気がノイズとなってしまい、脳の電気信号を受け取るセンサーとして使うことができないんです。

スマホやパソコンを遠ざけた場合など限られた環境では、筋電のセンサーは作動したんですが……。

――諦めたんですか。

私たちは、インプット・アウトプットのシステムを「プラットフォーム」にしたいと考えています。

プラットフォームになるためには、さまざまなアプリケーションの動作を保証する必要があるんです。そしてアプリケーションが確実に動くためには、プラットフォームはいろんな環境に適応していないといけない。

その点で、産業レベルに持っていくのは厳しいと判断しました。約1年、「筋電」をセンサーにしようと研究に費やしたけど、「今は使えないだろう」と。「これはもう仕方ないね」と封印したんです。

次ページ筋肉が通す光に注目
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事