琉球大で学んだ基礎を基に、東大の博士課程で、来る日も来る日も研究にのめり込んで作ったのが「ポゼストハンド」でした。
電極が付いた2つのバンドを腕に巻き付け、電極から電気刺激を与えることで前腕の筋肉を収縮させ、手指の動きを制御する仕組みです。
――2012年にはベンチャー企業「H2L」を立ち上げました。そして、「アンリミテッドハンド」「ファーストVR」など次々と製品を世に送り出しています。それぞれ、どんな装置なんでしょうか。
まず、脳の仕組みから考えましょう。脳は電気信号を出して筋肉を制御しています。その電気信号を増幅させて、脳が筋肉にどういう動きをさせようとしているか、推定するのが「筋電」という技術なんですね。
その筋電技術を使って製品を製作しようと考えました。それが「アンリミテッドハンド」です。ポゼストハンドはアウトプット機能だけでしたが、アンリミテッドハンドはインプット機能も入れようと考えました。
産業レベルに持っていけなかった
でも、テストを繰り返して研究レベルではOKが出たんですが、機能的にどうしても産業レベルに持っていくことができなかった。
理由はノイズです。
スマートフォンやパソコンが近くにあると、そこから発している電気がノイズとなってしまい、脳の電気信号を受け取るセンサーとして使うことができないんです。
スマホやパソコンを遠ざけた場合など限られた環境では、筋電のセンサーは作動したんですが……。
――諦めたんですか。
私たちは、インプット・アウトプットのシステムを「プラットフォーム」にしたいと考えています。
プラットフォームになるためには、さまざまなアプリケーションの動作を保証する必要があるんです。そしてアプリケーションが確実に動くためには、プラットフォームはいろんな環境に適応していないといけない。
その点で、産業レベルに持っていくのは厳しいと判断しました。約1年、「筋電」をセンサーにしようと研究に費やしたけど、「今は使えないだろう」と。「これはもう仕方ないね」と封印したんです。
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