ボディーシェアリングの最終目標は、ニューヨークにいる人がトルコにいる人やロボットの体を使えるといった空間的な制約をなくすことです。遠く離れた場所にある体と、装置を身に着けた自分との間で相互に「触感」を伝え合えるようになることで、実現できると考えています。
新型コロナウイルス感染症が拡大して以降、外出する機会は大きく減りました。その代わりにリモートワークが増え、以前は出張が必要だった会議でもZoomやMicrosoft Teams、Skypeを使って参加するようになりました。映像的な意味では、空間的な制約は既に取り払われつつある。
その延長線上で、ボディーシェアリングのステップに移っていけたらと思います。コロナは悪い影響をもたらしているけれど、そのおかげでイノベーションが動き始めたとも感じています。
新しい技術を生活に取り入れてほしい
――「他人やロボットの体を借りる」という概念を一般の人が受け入れることができるのでしょうか。ずいぶん先の話になるようにも思えます。新しい発想を広く社会に受け入れてもらうには何が必要だと考えますか。
新しい技術を自分の生活にどんどん取り入れてほしいと思います。
少し傲慢に聞こえるかもしれませんが、研究者はそれぞれの分野で挑戦している。研究者に限らず、仕事でも生活でも子育てでも、人間が何か活動しているときは少なからず、何かに挑戦しているわけですよね?
新しい技術は挑戦の塊みたいなものです。
その成果である新しい技術や製品を生活の中に取り入れ、「ここは使いにくかった」などの感想をフィードバックしてもらえたら、研究者は世の中に対しての寄与の方向性を定めることができます。
そういう相互作用を繰り返していくうちに、イノベーションが起きるし、より生活が豊かになっていくという好循環が生まれると考えています。
――自身の研究が実現したら、どんな未来になっていると思いますか。
身体的かつ空間的な制約による機会や経験の不平等がない世の中になったらいいなと思っているんです。沖縄に住んでいたらスキーを楽しむ機会は少ないし、シベリアに住んでいたらビーチで泳ぐ機会はすごく少ない。「家から出られない」人もたくさんいます。
私も高齢になれば、外出できなくなるときも来るでしょう。だからこそ、みんながいろいろな経験を積める“平等”な世の中にしたいと思います。
取材:当銘寿夫=フロントラインプレス(Frontline Press)所属
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